最近、ぺぎぃに寄せられた質問の一つに、
「le fait que」という表現の後には接続法と直説法の両方が使えるが、違いがわからない
というものがあった。
そこで、今回の記事では「le fait que」という表現について見ていくことにしよう。
- 「Le fait que + 接続法」について
- 「Le fait que + 直説法」は可能なのか?
ちなみに、フランスで30年暮らしてきたぺぎぃは、殆どの場合、特に口頭会話では「le fait que + 接続法」ばかり用いている。
これは「le fait que + 接続法」が100%正しく、「le fait que + 直説法」という言い回しが存在しないという訳ではないが、いつも「○○ que + 接続法」の表現ばかり使っているため、「le fait que」の場合にも「+ 接続法」の方が耳が自然に感じてしまうと言った方が正しい。(注意:勿論「○○ que + 接続法」とならない例外もある)
しかし、よく考えてみると確かに通常は「le fait que + 接続法」の方がしっくりとくるのだが、場合によっては「le fait que + 直説法」でも違和感がないというか、むしろ正しいと思える場合も存在する。
今回はそのような「le fait que + 接続法」と「le fait que + 直説法」の違いについて、ぺぎぃの感覚を頼りに解説していくとしよう。
目次
「Le fait que + 接続法」
1-1. 「Le fait que + 接続法」= 不確定な要素や疑いのニュアンス
ポイント
一般的には、不確定な要素や疑いのニュアンスを示すときには、
「le fait que + 接続法」が正しい。
まず、「Le fait que」という造りが聞こえてきたときに、真っ先に思い浮かぶのが「+ 接続法」という文法である。
接続法というのは、例えば「Le fait que je sois」や「Le fait qu’il doive」などの特殊な動詞の活用法のことで、基本的には不確定な要素や感情がこもった表現で使われることが多い。
そのため、今回の「le fait que + 接続法」の言い回しも、本来なら「確定された事実」について話すときではなく、「不確定な要素」や「疑問視されている事柄」について話すときだけに用いるのが一番しっくりくるのである。
不確定な要素を表す「Le fait que + 接続法」を用いた例文
1. Le fait que tu apprennes le français avant de partir en France facilitera ta vie là-bas. (フランスに行く前にフランス語を学ぶことは、現地の生活の助けになるでしょう)
⇒ 話し相手はまだフランス語を学んでいるわけではないが、「フランスに行く前に学べば、現地では有利になるよ」という話。
2. Le fait que Peggy soit un véritable pingouin ou non ne changera rien à ses qualités de professeur de français. (ぺぎぃが本物のペンギンかどうかは、彼のフランス語の先生としての能力には何の影響もありません)
⇒ ぺぎぃが本物のペンギンかどうか実際にはわからない。
1-2. 良くわからなければ:「Le fait que + 接続法」
考え方
一般的には、「le fait que + 接続法」が正しい。
(と覚えておけばよい)
1-1.では「接続法は不確定な要素のとき」と書いたが、実際にはフランス語で話しているときにいちいち「果たしてこれは確定された事実なのだろうか?そうではないのだろうか?」と自問自答しながら話している人はあまりいない。
また、実際に辞書などで調べてみると、「le fait que」という表現には必ずしも接続法のみが用いられる訳ではなく、直説法を用いても良いとされている。
これはネット上のフランス語に特化したサイトやフォーラムでも度々議論の的に上がる話題で、フランス語ネイティブの人の中でも「le fait que + 接続法」が絶対なのか、どのような場合には「le fait que + 直説法」の方が自然に聞こえるのか、100%納得できるような理論を持っている人は殆どいないという事実がある。
そのため、「フランス語が話せるようになりたい」という目的でフランス語を勉強している皆さんの場合には、特に深く考えずに「le fait que + 接続法」とだけ覚えてしまえばよいとぺぎぃは考える。
フランスで生まれ育った根っからのフランス人でさえ「le fait que + 接続法」と「le fait que + 直説法」の微妙なニュアンスを捉えることができていなく、辞書にも「接続法・直説法のどちらも可」と書いてあるのだから。
因みに、一点だけ注意点を挙げるとすれば、フランス語の「le fait que」に非常に良く似た表現に「le fait est que」というものも存在する。
この表現を用いる際には、「le fait est que + 接続法」ではなく「le fait est que + 直説法」となるので、気を付けたほうが良い。
(例)
Le fait est que je ne suis pas certain qu’il faille utiliser le subjonctif ou l’indicatif après “le fait que”. (「le fait que」の後に接続法を用いるべきなのか、直説法を用いるべきなのか、よくわかっていないのが現状です)
事実であっても「Le fait que + 接続法」を用いた例文
1. Pegiko apprécie beaucoup le fait qu’elle puisse vivre en France. (ぺぎこはフランスで生活でき(てい)ることに喜んでいる)
⇒ 実際にフランスで生活しているのだから、「le fait qu’elle peut vivre en France」と言っても良いのだが、「le fait + 接続法」に慣れてしまっている人には「le fait qu’elle puisse vivre en France」の方が自然に聞こえる。他にも「le fait de pouvoir vivre en France」と言い換えることも可能。
2. Le fait que Peggy soit un véritable pingouin ne changera rien à ses qualités de professeur de français. (ぺぎぃが本物のペンギンだということは、彼のフランス語の先生としての能力には何の影響もありません)
⇒ 先程の例文とは異なり、今回は「ぺぎぃが本物のペンギンかどうか」という疑問の話ではなく「ぺぎぃが本物のペンギンであることは」と事実について話しているが、「Le fait que Peggy est un véritable pingouin」の代わりに「Le fait que Peggy soit un véritable pingouin」と言っても、特に大きな問題にはならない。
スポンサーリンク
「Le fait que+ 直説法」
第1章で述べてきた説明や例文で、既にある程度はご理解いただけているかと思うが、ここでは「le fait que + 直説法」の使い方について見ていくことにしよう。
2-1. 「Le fait que + 直説法」= 事実について話すとき
ポイント
不確定な事柄ではなく、確定された事実についてはなすとき、
「le fait que + 直説法」を用いる。
「le fait que + 接続法」とは真逆の話だが、「不確定な要素」や「事実関係が曖昧な事柄」ではなく、明らかに「確定された事実」について話すときには「le fait que + 直説法」を用いたほうが自然に聞こえる場合がある。
例えば、先ほどの例文:
Le fait que Peggy soit ou non un véritable pingouin ne changera rien à ses qualités de professeur de français.(ぺぎぃが本物のペンギンかどうかは、彼のフランス語の先生としての能力には何の影響もありません)
これは、「実際にぺぎぃが本物のペンギンかどうかはわからないが」という疑問のニュアンスが含まれている。
しかし、「soit ou non」と曖昧な部分を、確定された「est」で入れ替えてみると:
Le fait que Peggy est un véritable pingouin ne changera rien à ses qualités de professeur de français.(ぺぎぃが本物のペンギンであることは、彼のフランス語の先生としての能力には何の影響もありません)
となる。
違いがお分かりだろうか?
一つ目の文では、「仮にぺぎぃが本物のペンギンであっても」という不確定なニュアンスが存在していたのに対して、二つ目の文では「ぺぎぃは本物のペンギンだが」と確定された事実について述べているのである。
このように、事実関係が曖昧な事柄ではなく、明らかに確定された事実を断言したいときには直説法を用いるのが自然となる。
確定された事実を表す「Le fait que + 直説法」を用いた例文
1. Comment expliques-tu le fait que Peggy a une tulipe sur la tête? (ぺぎぃが頭にチューリップを乗せていることをどうやって説明する?)
⇒ 「… que Peggy ait une tulipe sur la tête」と表現しても文法的にOKなのだが、今回は「ぺぎぃの頭にチューリップがある」というのは確定された事実であるため、直説法を用いたほうが自然である。
2. Pegiko apprécie beaucoup le fait qu’elle peut vivre en France. (ぺぎこはフランスで生活できていることに喜んでいる)
⇒ 1-2.で紹介した例文の直説法バージョン。人によっては「le fait qu’elle puisse vivre en France」の方が自然に聞こえるかもしれないが、今回は「既にフランスで生活することができているという事実に対してぺぎこは喜んでいる」と事実について話しているため、本当は直説法が正しい。「le fait qu’elle puisse vivre」と接続法で表現すると「生活できている」ではなく「生活できる(未来の可能性)」の話になる。
2-2. 「Le fait que + 直説法」と「Le fait que + 接続法」の違い
まとめ
それでは、最後に「le fait que + 直説法」と「le fait que + 接続法」を用いた文の違いについておさらいをしていこう。
これまで話してきた内容をまとめると:
- 「Le fait que + 接続法」は不確定な要素に対して話すときに用いる。
- 「Le fait que + 直説法」は確定された事実に対して話すときに用いる。
- よくわからない場合には、基本的に「Le fait que + 接続法」で問題ない。
となる。
まぁ、③だけ覚えてしまっても特に大きな問題にはならないと思うが、せっかくなので①と②の微妙なニュアンスがどう異なってくるかについて例文を一緒に見ていくとしよう。
例文~その①
1. Le fait qu’il pleuve ne changera rien au planning de ce soir. (雨が降っても、今夜のスケジュールに影響はありません)
⇒ これはまだ雨が降っているわけではないのに、「たとえ雨が降っても」と不確定な要素について話しているため「Le fait que + 接続法」を用いるのが自然。
2. Le fait qu’il pleut ne change rien au planning de ce soir. (雨が降っていても、今夜のスケジュールに影響はありません)
⇒ この文の場合には、「既に雨が降っているけれど」その事実は今夜のスケジュールに何ら影響をもたらさないという意味。確定された事実について話しているため、「Le fait que + 直説法」を用いる。
例文~その②
1. Le fait que Peggy soit un gentil pingouin ne suffit pas pour faire de lui un bon professeur de français. (ぺぎぃが優しいペンギンだとしても、それだけで彼が良いフランス語の先生だとは限らない)
⇒ これは「le fait que + 接続法」を用いているので、「仮にぺぎぃが優しいペンギンだとしても」というニュアンス。つまり話し手は「ぺぎぃ = 優しいペンギン」という事実を認めているわけではない。
2. Le fait que Peggy est un gentil pingouin ne suffit pas pour faire de lui un bon professeur de français. (ぺぎぃが優しいペンギンだとしても、それだけで彼が良いフランス語の先生だとは限らない)
⇒ この文では「le fait que + 直説法」を用いているので、「ぺぎぃは優しいペンギンだけど」というニュアンスになる。つまり話し手は「ぺぎぃ = 優しいペンギン」という事実を認めているということになる。
例文~その③
1. Pegiko se demande si le fait qu’elle sache parler le français est vraiment important. (ぺぎこは、彼女がフランス語を話せることが本当に重要なのか疑問に思っている)
⇒ この文では、まだぺぎこはフランス語を話せるわけではないが、「話せても話せなくても変わらないのなら、勉強しなくてもいいじゃない!」と考えている。「フランス語が話せる」の部分が不確定な要素なので、「le fait que + 接続法」を用いる。
2. Pegiko se demande si le fait qu’elle sait parler le français est vraiment important. (ぺぎこは、彼女がフランス語を話せることが本当に重要なのか疑問に思っている)
⇒ この文では、既にぺぎこはフランス語を話せているのだが、「重要なのはそこじゃなくて、別なところじゃないのかしら?」と考えている。「フランス語が話せる」の部分が確定された事実なので、「le fait que + 直説法」を用いる。
スポンサーリンク
ぺぎぃ先生、解説ありがとうございました。沢山の例文比較があったので、読み終わる頃には違いが分かるようになった気がします。いつも大満足の解説です。今後も楽しみにしています。
Molisさん、コメントありがとうございます!
こちらこそ、いつも興味深い内容のリクエストをありがとうございます!
また何かございましたら、遠慮なく言ってください。(*^▽^*)
ぺぎぃ