フランス語の日常会話でよく用いられる単語に「Truc」や「Machin」という言葉がある。
今回の記事ではこれらの言葉の意味や使い方について書いていくことにしよう。
- フランス語で「Truc」や「Machin」、「Bidule」などの使い方
フランス語で誰かと会話をしているときに、急に「C’est quoi ce truc?」とか、「Tu connais ce truc?」とか言われたことはないだろうか?
この「Truc」という言葉は、他にも「Machin」や「Bidule」などに置き換えが可能で、フランス語では本当に様々な使われ方をする言葉である。
例えば、
- Tu as un machin bizarre sur ton dos. (背中におかしなものが付いているよ)
- Mais c’est quoi ce bidule? (これは一体何?)
- Tu as pleins de trucs sur ton bureau! (机の上に色々なものが置いてあるね!)
など。
慣れればとても便利な言葉なのだが、初めて聞く人にとっては「何じゃそりゃ!?」と意味不明な言葉であることも間違いないだろう。
そこで今回の記事では、これらの「Truc」、「Machin」、「Bidule」などの言葉の意味と使い方について説明していくことにしよう。
目次
「Truc」の意味と使い方
まずは「Truc」という言葉について見ていくとしよう。フランス語ではものすごく頻繁に用いられる言葉である。
1-1. 「Truc」=「何か」
解説
「Truc」はフランス語で「何か」を意味する言葉である。
いや、どういうことだよ!というツッコミたくなる気持ちは十分わかるが、別にふざけているわけではない。
「Truc」という言葉は「何か」を意味する言葉。もう少しはっきり言うと、「名前がわからなかったり、表現が難しいもの」に対して使う言葉である。
例えば、フランス人の友達が初めて日本に遊びに来たとしよう。
そして、日本の居酒屋に連れて行ったとする。
すると、席に着くと同時に、店員さんがおしぼりを持ってくる。
「…? C’est quoi ce truc?」
おしぼりを見たことがないフランス人なら絶対にこう尋ねてくるだろう。
この場合、「C’est quoi ce truc?」の「ce truc」の部分は「この正体のわからない何か」ということを意味していて、フレーズ全体の意味は「この正体のわからないものは何だ?」ということになる。
他にも「Truc」という言葉は「おしぼり」のような物理的な物以外にも、先週話した会話の内容や、今夜の夕食の材料、ぐらついたテーブルを固定するための「何か」、髪の毛についているゴミ、など、様々な「何か」を言い表すことができる非常に便利な言葉である。
例えば、フランス語を勉強している人でも、「あれ?「鍵」という単語はフランス語で何て言うんだっけ?」と困ったときに「Comment on dit en français le truc pour ouvrir une porte?(フランス語でドアをあける「何か」のことを何て言いますか?)」と尋ねることができる。
「Truc = 何か」を用いた例文
1. C’est quoi ce truc que Peggy a sur la tête?(ぺぎぃが頭に乗せているのは何ですか?)
⇒ 直訳すると「ぺぎぃが頭に乗せている「何か」は何ですか?」となる。
2. Vous avez appris quoi comme truc en cours de français hier?(昨日のフランス語の授業で学んだことは何ですか?)
⇒ 直訳すると「昨日のフランス語の授業で学んだ「何か」は何ですか?」となる。
3. Rangez-moi tous ces trucs.(これらを全てかたずけろ!)
⇒ 直訳すると「ここにある「何か」を全て片付けろ」となる。いちいち「何と何と何を片付けろ」と言うのが面倒なので、一括りに「tous ces trucs」と表現することができる。
4. Il y a vraiment plein de trucs dans cette armoire.(この棚には本当に色んな物があるね)
⇒ 「Il y a plein de choses」と言い換えることもできる。
1-2. 「Truc」=「こつ・秘訣・得意とするもの」
おまけのような感じではあるが、「Truc」という言葉には、他にも「こつ」や「秘訣」というような意味合いが含まれることもある。
これも1-1.で説明した「何か」という意味に割と近い。
「Truc = こつ・秘訣・得意とするもの」を用いた例文
1. J’ai encore du mal à parler le français. Je n’ai pas le truc.(まだフランス語を話すのが苦手だ。コツが足りない)
⇒ 直訳すると「あの「何か」が足りない」という意味。若干不自然なフレーズに聞こえるかもしれないが、割と使える。
2. Ce n’est pas mon truc.(これは私の苦手なものだ)
⇒ 「コツがわからない」や「得意とするものではない」という意味。
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「Machin」の意味と使い方
続いて、「Truc」とよく似た意味の「Machin」について見ていくとしよう。
2-1. 「Machin」=「何か」
解説
「Machin」もフランス語で「何か」を意味する言葉である。
「Truc」の同義語だが、主に「物」に対してつかう。
「Machin」は「Truc」よりも若干頻度は少ないものの、全く同じ意味の言葉としてフランス語で良く用いられる。
英語を学んだことがある方なら、おそらく「マシン」と読みたくなるところだろうが、実は「Machin」と書いて「マシャン」と発音する。「マジシャン」の「ジ」を抜いたような感じ。
つまり、見た目からは「機械」的な意味を持つように感じられる人が多いかもしれないが、実際には「Truc」と同じように何にでも使える単語である。
ただし「物」限定。つまり「来週の予定」や「昨日話した内容」など抽象的なものに対してはあまり用いることができない。
一番多い用いられ方は、正体不明なものや、名前がわからないもの、名前を言うのが面倒くさかったり思い出すのが面倒くさいものに対してである。
例えば、1-1.で用いた「おしぼり」の例でも「C’est quoi ce machin?」や「Ça sert à quoi ce machin?」と言うことができる。
ただし、複数形で「Il y a beaucoup de trucs」とは言えるが、「Il y a beaucoup de machins」というのは何故か響きが悪いため、ぺぎぃはあまり使わない。
「Machin = 何か」を用いた例文
1. C’est quoi ce machin que Peggy a sur la tête?(ぺぎぃが頭に乗せているのは何ですか?)
⇒ 先程の「Truc」を用いた例と全く同じ意味。直訳すると「ぺぎぃが頭に乗せている「何か」は何ですか?」となる。
2. Est-ce que tu peux me donner le machin qui est sur la table?(テーブルの上に置いてあるやつを取ってくれないか?)
⇒ 直訳すると「テーブルの上に置いてある「何か」を取ってくれないか?」となる。例えば、テーブルの上にある「テレビのリモコン」を取ってほしいが、「リモコン」という単語が咄嗟に出てこなかったり、思い出すのが面倒なときに用いる。「Truc」でもOK。
3. Alors, comment ça marche ce machin…?(さて、これは一体どう動くのかな?)
⇒ 直訳すると「さて、この「何か」はどうやって機能するのかな?」となる。例えば、操作をしたことがないゲームや機械や道具など、具体的に「このボタンがあって、この画面があって…」などよくわからないときに、総じて「ce machin」の使い方がわからないと表現することができる。
2-2. 「Machin」=「誰か」
解説
「Machin」は人に対しても用いることができる。
(あまり丁寧ではない)
「Machin」という言葉の便利なところは、名前がわからなかったり、思い出せない人に対しても用いることができるということである。
例えば、日本人の名前などにありがちなことだが、フランス人に発音が難しかったり、覚えにくかったりすることが多い。
例えば、仮に「ユカワマナブ」という人が存在したとしよう。フランス語では「Manabu Yukawa」となるが、一発で覚えることができる人はそうはいない。
そこで呼ぶときに、「Euh… Comment il s’appelle déja? Yuwaka? Yukawa?」となり、「Hé, euh… Yuka-machin!」と「Machin」を付け加えて名前を成立させることになる。
他にも、「名前+苗字」で「Machin Chose」と言ったり「Machin Bidule」と言ったりすることもあるが、これもあまり丁寧な表現とは言えないだろう。
「Machin = 誰か」を用いた例文
1. Tu connais “machin” qui travaille avec nous?(俺たちと一緒に働いている「奴」を知っているか?)
⇒ 馴れ馴れしくはあるが、必ずしも見下しているわけではない。しかし、何日も一緒にいるのにいつまでも「Machin」と呼ばれている場合には、完全に舐めているともとれる。
2. Euh… Machin Bidule! C’est quoi ton nom déjà?(え~っと… 「誰々」君!君の名前何だっけ?)
⇒ 「Machin」だけではなく、次章で紹介する「Bidule」を付け加えることもできる。
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「Bidule」の意味と使い方
続いて、もう少し珍しい言葉の「Bidule」について話していくとしよう。
3-1. 「Bidule」=「正体不明な物」
解説
「Bidule」はフランス語で「ガジェット」のような意味。
「Truc」や「Machin」の同義語。
「Bidule」は「Machin」よりも更に珍しい単語だが、同じように「何か」と名前や正体が全く不明な物に対して用いることができる言葉である。
英語に例えると「Gadget(ガジェット)」に近い意味を持っていると思われる。
例えば、再び1-1.で用いた「おしぼり」の例を持ってくると「C’est quoi ce bidule?」やと言うことができないこともないが、おしぼりの場合は少し考えればタオルのような見た目から何なのかが容易に想像できるため、「Bidule(正体不明なもの)」として扱うのは少し言い過ぎな気もする。
適当な例を考えると、例えばゼンマイを巻くと「ケロケロ」と声を発しながらテーブルの上をジャンプする小さなカエルの玩具があったとする。
それを見たことがない人は、勝手にテーブルの上をジャンプして「ケロケロ」と動き回るカエルに対して「Mais qu’est-ce que c’est que ce bidule!?」と発言することができる。
これは「Quelle est cette chose?」や「Qu’est-ce que c’est que ce truc?」などと同じ意味であるものの、「Bidule」という単語を用いることによって「奇怪な物」や「ガジェット」という印象を少し強めた発言になっている。
「Bidule = 正体不明な物」を用いた例文
1. Mais qu’est-ce que c’est que ce bidule!?(一体この奇怪な物は何だ?)
⇒ 「Truc」や「Machin」よりも、更に「ガジェット」感が強くなる。
2. Range-moi ton bidule.(その奇妙な物をしまえ)
⇒ 「Range-moi ton truc」の場合は、例えば「部屋を片付けなさい」や「机を片付けなさい」という場合にも用いることができるが、「Range-moi ton machin」や「Range-moi ton bidule」は明らかに「対象物をしまえ」という意味になる。また、「Bidule」の場合は、時によっては性的な意味に聞こえる場合もあるため注意。
3. Comment ça s’appelle déjà ce bidule?(これの名前は何だっけ?)
⇒ 「Truc」や「Machin」でもOK。何かフランス語の名前がわからないときに活躍するフレーズ。ただし、言葉の強さとしては「Truc」<<「Machin」<<「Bidule」となるため、相手に失礼にならないように注意。
3-2. 「Machin bidule」や「Bidule chouette」=「誰か・何か」
これもまた、おまけのような感じだが、「Machin + Bidule」や「Bidule + Chouette」と二つの言葉を合体させて話すこともできる。
例えば、「ぺぎぃ」の名前が思い出せないときには(多少失礼ではあるものの)「Machin」だけで良いが、「ノートル・ダム・ド・ぺぎぃ」のように長い名前が思い出せないときには「Machin bidule chouette」と言ったりすることがある。
因みに、この「Chouette」というのは、本来は鳥の「ふくろう」を指す言葉であるが、「Machin」や「Bidule」と合わせて使う際には特に意味をなさない。
他にも:
- Machin Chose
- Machin Bidule
- Bidule Chouette
- Machin Bidule Chouette
などと、様々な合わせ言葉が存在する。「Truc」はあまり用いられない印象。
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「Chose」の意味と使い方
そして、最後に「Chose」についても触れておくことにしよう。
この言葉は「Truc」や「Machin」、「Bidule」とは異なるものの、似たようなフレーズで用いることができる言葉である。
4-1. 「Chose」=「物・物事」
解説
「Chose」はフランス語で「物」や「物事」を意味する言葉。
「Quelque」を付け足すと「何か」という意味になる。
今までは「Truc」や「Machin」など、単体で「何か」を表す言葉について紹介してきたが、「Chose」は明らかに「物」や「物事」を言い表す単語である。
例えば、
「Quelle est cette chose sur la table?」
と言うと「テーブルの上にある物は何?」という意味合いになるのに対し、
「C’est quoi ce truc sur la table?」
と言うと「テーブルの上にある「何か」は何?」という意味になる。
また、「テーブルの上にあるリモコンを取って」と表現したいが「リモコン」という単語が咄嗟に出てこないとき、
「Peux-tu me passer le truc qui est sur la table?」
(テーブルの上にあるやつを取ってくれる?)
と「Truc」や「Machin」を用いて表現することができるが、「Chose」を使うと、
「Peux-tu me passer la chose qui est sur la table?」
(テーブルの上にある「物(ブツ)」を取ってくれる?)
と「物」の部分が強調され、些か違和感を感じる言い回しになる。
日本語に例えるなら、麻薬など怪しい売買をしている業者が、「テーブルの上に物(ブツ)を置いてきた」と言っているような印象だ。
「Quelque chose」=「何か」
他にも「Chose」という言葉は「Quelque」を付け足すことによって、「Quelque chose(何か)」という意味に変化させることも可能である。
例えば、「テーブルの上に何かある」とフランス語で表現するとき:
- Il y a un truc sur la table.
- Il y a quelque chose sur la table.
の二通りの言い回しが可能である。
こうしてみると、「Truc = quelque chose」という簡単な式が成り立つ。
ただし、これは「un truc」と不定冠詞の場合限定で、「le truc」と定冠詞で明らかに何か対象物を指している場合には、どちらかと言うと「la chose」に近くなる。
(例)
- Il y a un truc sur la table. (テーブルの上に何かある)
- Il y a quelque chose sur la table. (テーブルの上に何かある)
- Est-ce que tu peux me passer le truc qui est sur la table?(テーブルの上にあるやつを取ってくれないか?)
- Est-ce que tu peux me passer la chose qui est sur la table?(テーブルの上にある「物」を取ってくれないか?)
「Chose= 物・物事」や「Quelque chose = 何か」を用いた例文
1. C’est quoi cette chose que Peggy a sur la tête?(ぺぎぃが頭に乗せている物は何ですか?)
⇒ 「Truc」の場合には「何か」という意味だったが、「Chose」の場合には「物」というニュアンスに変化する。
2. Il y a une chose qui me dérange dans ton discours.(君が話した内容の中に、違和感を感じる物が一つある)
⇒ 「Une chose」なので、明らかに「一つの物」に対して違和感を感じるということ。
3. Il y a quelque chose qui me dérange dans ton discours.(君が話した内容の中に、違和感を感じる何かがある)
⇒ 「Quelque chose」なので、何なのかは定かではないが、違和感を感じた部分があったということ。「Un truc」と言うことも可能。
4. La chose que j’apprécie le plus chez Peggy, c’est qu’il explique vraiment très lentement.(ぺぎぃの中で一番好きなところは、説明がとてもゆっくりなところです)
⇒ 「Le truc」と言い換えることもできる。
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