「フランス語の Pourtant や Malgré などの「譲歩を表す言葉」って何?」
「どうやって使い分けるの?」
以上の質問に答えるために、今回の記事では「フランス語の譲歩を表す言葉」について解説していくとしよう。これは、以前の「対立や対比を示すフランス語の言葉」の記事の続きみたいな感じである。
- フランス語で譲歩を示す接続詞の一例とその使い分け方
譲歩とは、自分の意見や主張を押し通さずに、他人の考えと折り合いをつけることを意味する。つまり、自分の考えを引っ込めて、他人の考えに従うことを指す。
ポイントは、対比や対立と異なり、二つの事柄を比較するのが目的ではなく、飽くまでも「Aの事柄があるが、意外とBもあるんだよな」のような感じで受け入れが目的である。
ちなみに、ぺぎぃはフランス語の教師ではないが、日仏バイリンガルとして今まで30年程フランス語に携わってきたので、フランス語の各単語の微妙なニュアンスについてはある程度把握しているつもりである。
そのため、今回の記事では、このような微妙な譲歩のニュアンスをフランス語ではどの言葉を用いて言えばいいのか、また接続詞の意味の違いは何なのかについて、ぺぎぃなりに解説していきたいと思う。
おそらく最後まで読めば、フランス語の中でも難しい接続詞の「Pourtant」や「Malgré」、「Quand même」などの使い分けができるようになっていることだろう。
目次
譲歩を表す接続詞 Mais / Pourtant / Alors que / Cependant / Toutefois / Néanmoins の使い方
譲歩を表す接続詞には色々とあるが、この章では「Mais」や「Pourtant」のように「でも」や「しかし」という意味で用いられる接続詞について説明していくとしよう。
1-1. 接続詞「Mais」と「Pourtant」の使い方
ちなみに簡単な前置きとして、接続詞「Mais」というのはフランスの接続詞の中で最も頻繁に使われると言っても過言ではない。
それ故に、以前の記事で書いた「対比の接続詞」や「対立の接続詞」としても使うことができる優れものであったが、逆に言えば、どの場合が対比/対立で、どの場合が譲歩なのか、言葉では少々説明が難しい。
それでもここでは、飽くまで「譲歩の接続詞」としての場面で使われる接続詞「Mais」と、それに似たような場面で使うことができる接続詞「Pourtant」ついて説明していきたいと思う。
譲歩の接続詞「Mais」や「Pourtant」の基本的な使い方
一つの印象の文(A)に対して、その考えを捨てさせるような内容の文(B)が連なったとき、
(A)+「Mais(~が)」+(B)
(A)+「Pourtant(~だけど)」+(B)
と譲歩を表す言葉として接続詞「Mais」や接続詞「Pourtant」使うことができる。
これだけでは、何が印象で何が内容なのかわかりにくいと思うので、どういうことかと言うと、例えば:
(A)Peggy semble faire peur.(ぺぎぃは怖そうです)
(B)Peggy est extrêmement gentil.(ぺぎぃは非常に優しいです)
この二つの文を例に考えてみることにしよう。
(A)の文では、「ぺぎぃは怖そう」と言っているので、明らかにネガティブな印象を受けるフレーズである。しかし、(B)の文では、「ぺぎぃは非常に優しい」とポジティブな内容のことを言っている。
つまり、ここでは「ぺぎぃは(A)のように見えるけど、実は(B)なんだよね」とネガティブだった(A)の印象に対して、(B)の内容を持ってくることによってポジティブな方向に修正をかけている。
このようなときに:
(A)+(B)Peggy semble faire peur, mais il est très gentil.(ぺぎぃは怖そうですが、とても優しいです)
(A)+(B)Peggy semble faire peur, pourtant il est très gentil.(ぺぎぃは怖そうだけど、とても優しい)
と譲歩の接続詞を使って二つの文を繋げることができるのである。
譲歩の接続詞「Mais」や「Pourtant」を用いた例文
1. On dirait qu’il pleut beaucoup cette année, mais c’est toujours mieux que l’année dernière.(今年は良く雨が降るように見えるが、去年よりはまだましな方だ。)
2. Peggy semble gros, pourtant il court très vite.(ぺぎぃは太っているように思わせるが、とても足が速い)
3. Pegiko a l’air fragile, pourtant elle n’est pas tombée malade depuis plus de 5 ans.(ぺぎこは体が弱いように見えるけれど、もう5年近くも病気にかかっていない。)
4. Tout le monde pense que je déteste les chats, mais j’en ai deux chez moi.(みんな僕が猫が嫌いだと思っているが、家に2匹飼っているんだよ。)
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1-2. 接続詞「Alors que」の使い方
もう一つ、譲歩を表す接続詞として用いることができるものに「Alors que」という接続詞がある。
これも接続詞「Mais」と同じように、対立を表す接続詞としても紹介したものである。
譲歩の接続詞「Alors que」の基本的な使い方
一つの印象の文(A)に対して、その考えを改めさせるような内容の文(B)が連なったとき、
(A)+「Alors que(~なのに)」+(B)
「Alors que(~なのに)」+(B), (A)
と譲歩を表す言葉として接続詞「Alors que」を用いることができる。
先程の「Mais」や「Pourtant」と同じ説明なのに、何故「Alors que」だけわざわざ別にしたかと言うと、言葉の順番を入れ替えることが可能だからである。例えば、先ほどの例を再び用いると:
(A)Peggy semble faire peur.(ぺぎぃは怖そうです)
(B)Peggy est extrêmement gentil.(ぺぎぃは非常に優しいです)
これらの二つの文を「~のに」の表現を使って日本語で表すとなると「ぺぎぃは実は(B)なのに、(A)の印象なんだよね」と、まず(B)について述べてから(A)の印象について語ることになる。
しかし、フランス語では:
(A)+(B)Peggy semble faire peur, alors qu’il est très gentil.(ぺぎぃは怖そうですが、とても優しいです)
(B)+(A)Alors qu’il est très gentil, Peggy semble faire peur.(ぺぎぃは怖そうだけど、とても優しい)
とどちらの順番でも、二つの文を繋げることができるのである。
譲歩の接続詞「Alors que」を用いた例文
1. Peggy semble stupide, alors qu’il est très intelligent.(実はとても頭が良いのに、ぺぎぃは馬鹿のように見える)
2. Pegiko a l’air très fatiguée, alors que pourtant elle a dormi toute l’après-midi.(ぺぎこは午後ずっと寝ていたのに、とても疲れている様子だ)
3. Alors que j’ai deux chats chez moi, tout le monde pense que je déteste les chats.(家に猫を2匹飼っているのに、みんな僕が猫を嫌いだと思っている)
1-3. 接続詞「Cependant」、「Néanmoins」、「Toutefois」の使い方
続いて、接続詞「Mais」と似たような感じで用いることができる、よりフォーマルな接続詞に「Cependant」や「Néanmoins」、「Toutefois」というものがある。
これらの接続詞も譲歩を表すときに用いることができるとして有名だが、口頭会話で用いることは少なく、主に筆記がメインとなっている。
これらの接続詞の違いと使い分け方については、以前別の記事で説明しているので、興味がある方は以下のリンクからお読みください。
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譲歩を表す接続詞 Malgré / En dépit de の使い方
もう一つ、譲歩を表す接続詞として大きく分けられるのが「Malgré」や「En dépit de」である。
これらの接続詞も譲歩を表すときに用いることができるが、文法面で「Mais」や「Pourtant」などの接続詞と大きく使い方が変わってくるので、あえて分けて説明する。
2-1. 接続詞「Malgré」と「En dépit de」の使い方
接続詞「Mais」と何が違うのかと言うと、「Mais」が二つの文を繋げる接続詞であったのに対して、「Malgré」と「En dépit de」は文ではなく必ず名詞が後に続くということである。
譲歩の接続詞「Malgré」や「En dépit de」の基本的な使い方
一つの文(A)に対して、「~にもかかわらず」と(B)の名詞要素が連なったとき、
(A)+「Malgré(~にもかかわらず)」+(名詞B)
(A)+「En dépit de(~にもかかわらず)」+(名詞B)
若しくは
「Malgré(~にもかかわらず)」+(名詞B), (A)
「En dépit de(~にもかかわらず)」+(名詞B), (A)
と現実を無視する譲歩の言葉として接続詞「Malgré」と「En dépit de」を使うことができる。
こうしてみると、文の順番を入れ替えることができるという点では「Alors que」と全く同じだが、大きなポイントは、「(B)の要素を名詞で表す必要がある」ということである。
具体例を用いて説明すると、例えば:
(A)Peggy veut partir se promener.(ぺぎぃは散歩に出かけたがっている)
(B)Il pleut dehors.(外は雨です)
という二つの文があるとしよう。
これらをこのまま繋げると、1章目で見た「Mais」や「Alors que」を用いて:
(A)+(B) Il pleut dehors, mais Peggy veut partir se promener.(外は雨ですが、ぺぎぃは散歩に出かけたがっている)
(A)+(B) Alors qu’il pleut dehors, Peggy veut partir se promener.(外は雨なのに、ぺぎぃは散歩に出かけたがっている)
となる。
しかし、これらの文は「Malgré」や「En dépit de」を使って表現することも可能である。その際には、以下のように(B)の文を名詞だけで構成する必要がある:
(A)+(B)Malgré la pluie, Peggy veut partir se promener.(ぺぎぃは怖そうですが、とても優しいです)
(A)+(B)Peggy veut partir se promener, malgré la pluie.(ぺぎぃは怖そうだけど、とても優しい)
譲歩の接続詞「Malgré」や「En dépit de」を用いた例文
1. En dépit des apparences, Pegiko est très forte quand elle se fâche.(見かけによらず、ぺぎこは怒るととても強い。)
2. Beaucoup de japonais apprennent le français, malgré la difficulté de la langue.(フランス語はとても難しい言語なのに、多くの日本人が勉強している)
3. Malgré le fait qu’il pleuve, Peggy est allé se promener.(そとは雨が降っているのに、ぺぎぃは散歩に出かけました)
⇒ ここでは「il pleut」だけだと名詞ではないので「Malgré」を用いることができないが、「le fait(という事実)」という言葉を挟むことによって、名詞と化することができる。ただし、その場合は「il pleuve」と接続法を用いることになるので、上級者向けの裏技である。
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譲歩を表す接続詞 Quand même / Tout de même / Malgré tout の使い方
最後におまけとして、「Quand même」という接続詞についても少し紹介しよう。
この「Quand même」という言葉は以前別の記事で紹介したように、フランス語で色々な使い道がある面白い言葉だが、実は譲歩の接続詞としても用いることが可能である。
また、その他にも類義語として「Tout de même」や「Malgré tout」という表現を用いることもできる。
譲歩の接続詞としての「Quand même」の基本的な使い方
一つの文(A)に対して、「それでも~」(B)である、と譲歩のニュアンスを強調したいときに接続詞「Quand même」を用いることができる。
(A)+「Mais」+(B)+「Quand même」
なお、この接続詞は必ず動詞の後に用いられる。
ここでも具体例を用いて説明しよう。例えば:
(A)Je n’avais pas très faim.(あまりお腹が空いていなかった)
(B)J’ai beaucoup mangé.(たくさん食べた)
という二つの文がある。
これらの文は、接続詞「Mais」のみを用いて繋げることが可能である:
(A)+(B) Je n’avais pas très faim mais j’ai beaucoup mangé.(あまりお腹が空いていなかったけれど、たくさん食べた)
これでも十分文としは成立する。
しかし、更にもう少し深く譲歩のニュアンスを伝えたいときには、「Quand même」や「Tout de même」、「Malgré tout」などの言葉を付け足すことができるのである:
(A)+(B) Je n’avais pas très faim mais j’ai quand même beaucoup mangé.(あまりお腹が空いていなかったけれど、それでもたくさん食べた)
(A)+(B) Je n’avais pas très faim mais j’ai tout de même beaucoup mangé.(あまりお腹が空いていなかったけれど、それでもたくさん食べた)
(A)+(B) Je n’avais pas très faim mais j’ai beaucoup mangé malgré tout.(あまりお腹が空いていなかったけれど、それでもたくさん食べた)
譲歩の接続詞「Quand même」や「Tout de même」を用いた例文
1. Je n’ai plus beaucoup de force pour courir mais je vais terminer ce marathon quand même.(もう走る力はあまり残っていないが、このマラソンは一応最後まで走りぬくよ)
2. Peggy a horreur du froid mais il est quand même parti skier.(ぺぎぃは寒さが大の苦手ですが、それでもスキーに出かけました)
3. Il pleuvait encore dehors mais Pegiko a tout de même fait la lessive.(そとはまだ雨が降っていましたが、それでもぺぎこは洗濯をしました)
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譲歩を表す接続詞まとめ
以下に今回勉強した譲歩を表す接続詞をまとめよう:
Mais | 「しかし」という意味の接続詞。フランス語の接続詞の中で最も多く使われると言っても過言ではなく、対立や対比、譲歩など様々な意味で用いることができる万能な接続詞。 |
---|---|
Pourtant | 「~だけど」や「~でも」という意味の接続詞。今回は「Mais」とともに、譲歩を表す接続詞として紹介した。フランス語では口頭会話でもかなり頻繁に用いられる。 |
Alors que | 同じく、対比を表す接続詞として紹介したことがある接続詞。今回は譲歩の意味で用いることができる例を紹介した。 注意点としては、「Mais」や「Pourtant」と文の順番を入れ替えることができるというところ。また、「Alors que pourtant」と繋げて用いることも可能。 |
Cependant / Néanmoins / Toutefois | 「Mais」や「Pourtant」の同義語だが、どちらかと言うとフォーマルな場や筆記で多く使われるため、口頭会話で聞くことは少ない。 |
Malgré | 「~のに」という意味で用いられる譲歩の接続詞。 注意点としては、「Malgré + 名詞」の形ではないと使えないというところ。裏技として「Malgré + le fait que + 文(接続法)」という構成で使うこともできるが、接続法を使いこなせる上級者向け。 |
En dépit de | 「Malgré」と同じ意味の譲歩の接続詞。ただし、非常にフォーマルなためか、筆記専用なためか、個人的には用いている人をあまり見たことがない。 |
Quand même | フランス人が大好きな言葉。今回は譲歩の接続詞として使う方法を紹介した。接続詞の「Mais」と連携して用いることによって、譲歩のニュアンスを強調することができるというのがポイント。 文中では必ず動詞の後に置かれる。 |
Tout de même / Malgré tout | 「Quand même」と全く同じ意味を持つ譲歩のニュアンスを強調する接続詞。気分によって、使い分けるとよいだろう。 |
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こんにちは!
ページを作っていただいてありがとうございます!
一つ質問をさせてください!
・Alors qu’hier il faisait beau, aujourd’hui il pleut.
・Malgré le beau temps d’hier, il pleut aujourd’hui.
・Bien qu’il ait fait beau hier, il pleut aujourd’hui.
Alors queの文をお借りして、2つ書いて見たのですが微妙な違いを理解できているかわからなくなります。
私が思うに、Alors queは事実を述べているだけでBien queとMalgréには話し手の感情が入ってるように感じます、あとbien que ってなんか皮肉っぽくてより感情が入ってる感じがします。
ぺぎぃさんはどう思われますか?
ペンギンリスペクトさん、コメントありがとうございます。
なるほど、面白いですね。個人的には真逆の印象を受けます。
何となくですが、「Bien que」の場合は事実を述べているだけ、「Alors que」は残念そうな感情が入っていて、「Malgré」はその中間あたりの感じです。
おそらく一個人の印象なので、理屈付が難しいですが、一つだけ述べるとすれば「Alors que」は話し言葉に使われることが多く、「Bien que」は主に筆記に使われるからだと思います。
私は長らくフランスで「Alors que…」「Alors que…」を文句を言ってくる人を聞いてきましたが、「Bien que」の場合はフォーマルな筆記文章でしか見たことがないため、感情が伏せられていることが多いイメージです。
返信ありがとうございます。
なるほど、Peggyさんは真逆の印象を受けられますか!
私がこれらの表現を習ったときの例文では、Bien queだけ皮肉を言ってる印象を受けたので、きっとわざとそうしたのかなと勝手に思っていました。
確か Bien qu’elle soit en retard, elle ne se dépêche pas. って文だったと思います。
勉強になりました、ありがとうございます。