フランス語を勉強していると、「c’est」と「il est」のどちらを使えばいいのか、迷った経験はないだろうか?

例えば「このセーターは暖かい」と言いたいとき:

  • Un pull en laine, c’est chaud.
  • Ce pull, il est chaud.

どちらも「暖かい」という意味だが、フランス語としての機能はまったく異なる。(なんなら、正確に言うと、2文目は「暖かい」ではなく「温かい」になる)

日本語ではどちらも「〜だ・〜です」と訳せてしまうため、ここで多くの学習者がつまずいてしまう。

しかし実は、この使い分けには明確なロジックがある。 今回の記事では、ぺぎぃと一緒に「c’est」と「il est」の使い分けを、形容詞・名詞・不定詞構文などのパターン別に整理していこう。

本記事の内容

  • c’est」vs「il/elle est」+形容詞 ── 汎用コメント と 特定描写の違い
  • c’est」vs「il/elle est」+無冠詞名詞 ── 識別・同定 と 職業・属性の述べ方
  • c’est」+形容詞+à vs「il est」+形容詞+de
  • 時刻・日付・場所・価格

最後まで読んでいただければ、「c’est」と「il est」のどちらを選ぶべきか、状況に応じて直感的に判断できるようになるはずだ。

記事の最後には練習問題もあるので、楽しみにしていてほしい。

ぺぎぃ
ぺぎぃ
c’est」か「il est」か、ぺぎぃと一緒に「モヤモヤ」をスッキリ解決してしまおう!

https://onsenpeggy.com/adjectif-demonstratif-ce-cet-cette-ces/

1.「c’est」+形容詞 vs「il/elle est」+形容詞

フランス語のc'estとil estの提示と描写の違いを表すイラストc’est+形容詞 と「il est+形容詞は、どちらも「〜だ」という意味の文を作る。

しかし、コメントの向け先がまったく異なるため、注意が必要である。

c’est」+形容詞 = 汎用的なコメント
(種類・体験全般)

il/elle est」+形容詞 = 特定の対象への描写
(目の前の「それ」)

1-1.「c’est」+形容詞 ── 一般論・汎用コメント

c’est」の主語「c’」は中性で、特定の名詞ではなく「〜というもの全般」や「前述の話題・体験全体」を指す。

そのため、形容詞は常に男性単数形(不変)となる。

1. Un pull en laine, c’est chaud.(ウールのセーターって暖かいよね)
⇒「ウールのセーター」という種類全般についての汎用コメント。特定のセーターを指していない。

2. Les tulipes roses, c’est joli.(ピンクのチューリップってきれいだよね)
⇒「ピンクのチューリップ」というカテゴリー全般への一般的な感想。形容詞は「joli」のまま男性単数形を維持する(「les tulipes」が女性名詞でも不変)。

3. C’est bon !(美味しい!)
⇒ 料理・体験全体への汎用的な感想。

1-2.「il/elle est」+形容詞 ── 特定の対象への描写

il est」の主語「il / elle」は、直前に出てきた特定の名詞を示す。

形容詞は主語の性・数に一致させる必要がある。

1. Ce café, il est chaud.(このコーヒー、熱いよ)
⇒「ce café(このコーヒー)」という特定のコーヒーへの描写。「il」は「café」(男性名詞)を受ける。

2. Cette tulipe rose, elle est belle.(このピンクのチューリップ、美しいね)
⇒ 目の前の特定のチューリップへの描写。「elle」が「cette tulipe rose」(女性名詞)を指し、形容詞も女性形の「belle」を用いる。

3. Il est bon, ce gâteau.(このケーキ、美味しいね)
⇒「ce gâteau」という特定のケーキへの描写。

ぺぎこ
ぺぎこ
じゃあ「Un bain, c’est chaud」と「Ce bain, il est chaud」は意味が違うの?
ぺぎぃ
ぺぎぃ
前者は「お風呂というのは温かいものだよね」という一般論、後者は「この(特定)の風呂(の湯)は温かい・熱い」という個別の評価だね。 

【補足:「ça」について】

c’est」の代わりに「ça」(それ)を使うこともできる。「ça」はより口語的な表現。

例:Courir, ça fatigue!(走るって疲れるよね!)

意味・機能は「c’est」に近いが、本記事では「c’est」と「il est」の対比に絞って解説する。

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2.「c’est」+冠詞+名詞 vs「il/elle est」+無冠詞名詞

フランス語で職業や国籍を述べるときのc'estとil estの使い分けイラストc’est」+名詞 と「il est」+名詞(無冠詞)も、よく混同されるパターンである。

ポイントは冠詞の有無にある。

「c’est」冠詞+名詞 =「カテゴリー」を識別・同定する

「il/elle est」+名詞(冠詞なし)= 職業・肩書き・属性

2-1.「c’est」+冠詞+名詞 ── 識別・同定

c’est」の後ろに冠詞(un, une, mon, son…)を伴う名詞を置くと、それが何者か・何物かを特定・同定する文になる。

なお、もともと冠詞がない固有名詞地名も同様の扱いである。

1. C’est une amie.(彼女は友人です)
⇒ 「une(不定冠詞)+名詞」で、人物を「友人」というカテゴリーに特定している。

2. C’est Peggy.(ぺぎぃです)
⇒ 固有名詞で人物を特定している。

3. C’est la tour Eiffel.(あれはエッフェル塔です)
⇒ 地名・建物名などでも「c’est」で同定する。

2-2.「il/elle est」+無冠詞名詞 ── 職業・肩書き・属性

ここが本記事で一番ややこしいポイントであるが、職業・肩書き・国籍・宗教などを「属性」として述べるときには、名詞は形容詞的に使われ、冠詞を付けない

1. Il est ingénieur.(彼はエンジニアです)
⇒ 冠詞なし。「エンジニアである」という属性を述べている。

2. Il est socialiste.(彼は社会主義者です)
⇒ 政治的立場も「il est」+無冠詞名詞で表す。

3. Il est chrétien.(彼はキリスト教徒です)
⇒ 宗教的属性も同様に冠詞なしで示す。

【大文字・小文字の使い分け】
国籍を表す語は、「c’est」の後ろで名詞として使う場合は大文字、「il est」の後ろで形容詞的に使う場合は小文字になる。

  • C’est une Italienne.(彼女はイタリア人だ)
    ⇒ 名詞 → 大文字
  • Elle est italienne.(彼女はイタリア人だ)
    ⇒ 形容詞 → 小文字

修飾語がある場合には、例え名詞が職業や国籍だったとしても、同職業や国籍の中の特定の「カテゴリー」という考えが優先され、必ず c’est」+冠詞+名詞 の形を用いる。

もっとシンプルに言い換えるなら、形容詞などで修飾する場合は、「il est」ではなく「c’est冠詞の形にすると覚えておくのが良いだろう。

Il est médecin.
(修飾なし → 無冠詞)

C’est un médecin compétent.
(修飾あり → 冠詞付き)

Il est un médecin compétent.
(「il est + 冠詞付き名詞」は原則として使わない)

ぺぎこ
ぺぎこ
形容詞を付けたくなった瞬間に「c’est」に切り替えるってこと?
ぺぎぃ
ぺぎぃ
そのとおり!「il est médecin」はシンプルに属性を述べるだけ。そこに「有能な」とか「素晴らしい」を足したくなったら、自動的に「c’est un médecin compétent」の形に切り替えるんだ。

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3.「il est」+形容詞+de vs「c’est」+形容詞+à

フランス語でil est形容詞deとc'est形容詞àの前置詞の使い分けイラスト 中上級者が最もつまずきやすく、かつマスターすると表現力が一気に上がるのが、不定詞を伴うà」と「de」の使い分けだ。

ここも「c’est」と「il est」の違いがそのまま前置詞の選択に反映される。

C’est」+ 形容詞 + à + 不定詞
= 前に出た対象の性質を「補足

「Il est」+ 形容詞 + de + 不定詞
= これから述べる内容を「導入

3-1.「c’est」+形容詞+à+不定詞 ── 前に出た対象の性質を補足

c’est」の「c’」は直前に出てきた特定の対象を指す。

à+不定詞」でその対象の性質を補足・限定する。文末に補足的に置くのが自然な形。

1. Courir, c’est fatigant.(走るって疲れるんだよね)
⇒「courir(走ること)」を前に出して、「c’est」で補足のコメントをしている。

2. Les pâtes, c’est facile à préparer.(パスタって準備しやすいよね)
⇒「les pâtes」という既出の対象について、「準備しやすい」という性質を「à不定詞」で補足している。

3. Le français, c’est long à apprendre.(フランス語って学ぶのに時間がかかるよね)
⇒「le français」という言語の性質を末尾で補足している。

3-2.「il est」+形容詞+de+不定詞 ── これから述べる内容を導入

il est」の「il」は仮の主語

de+不定詞」以下が文の本当の内容(主題になる。一般論・汎用的な評価に使う。

1. Il est fatigant de courir.(走るというのは疲れる)
⇒「走ること」という行為を「fatigant」と評している。「il」は仮主語。

2. Il estfacile de préparer des pâtes.(パスタを準備するのは簡単だ)
⇒「パスタを準備すること」への一般的な評価。

3. Il est long d’apprendre le français.(フランス語というのは学ぶのに時間がかかる)
⇒「フランス語」という言語に対する一般論。

セットで覚えよう:
Le français, c’est difficile à apprendre.(既出対象の補足:フランス語というものは学ぶのが難しい)
Il est difficile d’apprendre le français.(一般論:フランス語は学ぶのが難しい)
どちらも口語では「C’est difficile d’apprendre le français.」とも言えるが、文の補足として末尾に置く場合は「à」が自然である。
 
ぺぎぃ
ぺぎぃ
Il estde」はこれから内容を導入するイメージ、「c’està」は前に出たものについて「それは〜だよ」と補足するイメージ。最初は難しく感じるけど、例文で慣れるのが一番だよ!

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4. 時刻・日付・場所・価格の定型処理

フランス語で時刻・日付・場所・価格をc'estとil estで表現するイラスト 日常会話で頻繁に登場する表現も、「c’est」と「il est」のどちらを使うか、しっかり整理しておこう。

場面使う構文例文備考
時刻「il est」…Il est dix heures.(10時です)非人称構文の「Il
曜日・日付「c’est」…C’est lundi.(月曜日です)
C’est le 10.(10日です)
on est」も一般的(ぺぎぃはこちらを用いることが多い)
場所の提示「c’est」…C’est ici.(ここです)場所の同定・提示
場所の描写「il est」…Il est là-bas.(あそこにある)既出の対象がどこにあるか
単価の提示「c’est」…C’est 4 euros.(4ユーロです)いきなり「4 euros」でもOK、1個・1kgなどの単価にも使える
合計金額Ça fait …Ça fait 90 euros.(90ユーロになります)会計時の合計には「Ça fait」が一般的

ぺぎこ
ぺぎこ
時刻だけ「il est」で、日付は「c’est」なの?
ぺぎぃ
ぺぎぃ
そう!時刻の「il est」は「非人称構文」の「il」で、人や物を指していないんだ。ただ、地方によっては「c’est」を使う人もいるよ。

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5. まとめ

フランス語のc'estとil estの使い分けをまとめたイラスト 今回は、フランス語の「c’est」と「il est」の使い分けについて、パターン別に整理した。

使う場面構文
種類・全般へのコメントc’est+形容詞La lave, c’est chaud.
(形容詞は不変の男性単数形)
特定の対象の描写il/elle est+形容詞Ce café, il est chaud.
(形容詞は対象の性・数に一致)
識別同定c’est冠詞+名詞C’est une amie.
C’est Peggy.
職業/国籍/宗教などの属性il est+冠詞なし名詞Il est pompier.
Elle est musulmane.
既出対象への補足c’est+形容詞+àUne omelette, c’est facile à faire.
内容の導入(一般論)il est+形容詞+deIl est facile de parler devant tout le monde.

ぺぎこ&ぺぎぃ
ぺぎこ&ぺぎぃ
というわけで、今回の記事はここまで!「c’est」と「il est」の使い分け、バッチリ理解できたかな?ロジックさえ押さえれば、あとは例文を繰り返すだけだよ。また次回の記事でお会いしよう!

他のフランス語文法に関する記事は以下のリンクからチェックしてみてください。

https://onsenpeggy.com/grammaire-francaise-avec-peggy/

6. 練習問題

フランス語でc'est bonとil est bonの状況全体と特定対象の使い分けイラスト それでは、今回学んだことを練習問題で確認してみよう。問題を解いてから解答を見るようにしてほしい。

問題1:選択問題

適切な表現を選んでみよう。(「c’est」/「il est」/「elle est」)

① Regarde ce gâteau de Pegiko, (  ) délicieux !
(ぺぎこのケーキを見て、それおいしそう!)

② Un onsen, (  ) chaud et relaxant.
(温泉って熱くてリラックスできるよね)

③ (  ) midi.
(お昼の12時です)

④ Peggy, (  ) sympa.
(ぺぎぃって感じがいいよね)

⑤ Manger des crêpes, (  ) bon !
(クレープを食べるって美味しいよね!)

問題2:( )内の形に書き換えてみよう

① Pegiko est chanteuse.(talentueuse)

② Il est cuisinier.(excellent)

③ Elle est guide.(formidable)

問題3:活用・穴埋め問題

文脈に応じて空欄を埋めてみよう。

① Pegiko, (  ) quelqu’un (  ) très gentille.
(ぺぎこはとても優しい人です)

② (  ) difficile (  ) apprendre le japonais.
(日本語を学ぶのは難しい)

③ (  ) samedi aujourd’hui.
(今日は土曜日だ)

④ Cette chanson de Peggy ? (  ) agréable (  ) écouter.
(ぺぎぃのあの歌、聴きやすいね)

⑤ Combien coûte cette tarte ? ― (  ) 8 euros.
(このタルト、いくらですか? ― 8ユーロです)

ぺぎぃ
ぺぎぃ
解答を確認してみよう!解説もしっかり読んで、理由まで理解しておくことが大切だよ。

問題1の解答

① 正解:il est délicieux
⇒「ce gâteau de Pegiko(ぺぎこのケーキ)」という特定のケーキ(男性名詞)への描写。「il」が「gâteau」を示し、形容詞も男性形。

② 正解:c’est
⇒「un onsen(温泉)」という種類・カテゴリー全般への汎用コメント。形容詞「chaud」は不変のまま。

③ 正解:il est
⇒ 時刻を述べる非人称構文。時刻には必ず「il est」。

④ 正解:il est
⇒ぺぎぃを指して描写している。

⑤ 正解:c’est
⇒「クレープを食べること」という行為全般への汎用コメント。形容詞は不変の男性単数形「bon」。

問題2の解答

① 正解:C’est une chanteuse talentueuse.
⇒ 修飾語「talentueuse」を加えるため、冠詞付きの「c’est une…」の形にする。形容詞は女性形(talentueuse)になる。

② 正解:C’est un excellent cuisinier.
⇒「excellent」は名詞の前に置く形容詞。語順に注意(un excellent cuisinier)。

③ 正解:C’est une guide formidable.
⇒ 修飾語「formidable」を加えるため「c’est une…」を用いる。

問題3の解答

① 正解:C’est quelqu’un de très gentille gentil
⇒「c’est quelqu’un de+形容詞」の形容詞は常に男性単数形。「gentille」ではなく「gentil」が正解のため、直していたら花丸!

② 正解:Il est difficile d’apprendre le japonais.
⇒「日本語を学ぶこと」という内容をこれから導入する非人称構文。「il est+形容詞+de+不定詞」。

③ 正解:C’est samedi aujourd’hui.
⇒ 曜日の特定には「c’est」。「on est」でもOK。

④ 正解:elle est agréable à écouter.
「cette chanson de Peggy」という特定の歌に対して話しているため「c’est」ではなく「elle est」。前置詞「à」は「être agréable à」から。

⑤ 正解:C’est 8 euros.
⇒ 商品の単価提示には「c’est」+金額を用いる。

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