【フランス語】「ce・cet・cette・ces」の使い分け|指示形容詞
フランス語を勉強し始めた頃、「ce」と「cet」と「cette」の使い分けに混乱した経験はないだろうか?
例えば「この本」と表現するときには:
「この本」= ce livre ? cette livre ?
という具合である。
実は、日本語では「この・その・あの」と距離感で使い分けるが、フランス語はまったく別のロジックで動いている。
フランス語が気にするのは「距離」ではなく、指し示す名詞の「性別(男性・女性)」と「数(単数・複数)」、そして「次に続く音」。
このルールさえ押さえてしまえば、「ce」「cet」「cette」「ces」の4つを迷わず選べるようになる。
今回の記事では、ぺぎぃと一緒に指示形容詞の仕組みを見てみよう。
- 指示形容詞の4形態(ce, cet, cette, ces)と性数一致のルール
- 母音・無音のhの前に「cet」が登場する音の理由(Hiatus回避)
- 複数形「ces」のリエゾンと単数との聞き分け方
- 距離感を表す「-ci」「-là」の使い方と現代口語の実態
- 指示代名詞「C’est」との混同を防ぐ識別ポイント
最後まで読んでいただければ、「ce」「cet」「cette」「ces」の使い分けが頭の中でスッキリと整理できるはずだ。記事の最後には練習問題もあるので、楽しみにしていてほしい。
なお、フランス語文法講座の他の記事に興味がある方は、以下のリンクから確認してほしい。
目次
1. 指示形容詞とは?4つの形と基本ルール

指示形容詞(adjectifs démonstratifs)とは、英語の “this” や “that” に相当するもので、「この〜」「その〜」「あの〜」というように特定の名詞を指し示す言葉である。
フランス語では必ず名詞の直前に置いて使う。
そして最大の特徴は、指し示す名詞の「性・数」に応じて形を変える点にある。
1-1. 4つの形と使い分けの条件
指示形容詞は、名詞の性・数に合わせて4種類から選ぶ。
| カテゴリ | 指示形容詞 | 使用条件 | 例 |
| 男性単数形 | ce | 子音で始まる名詞の前 | ce gilet(このベスト) |
| 男性単数形 (変則) | cet | 母音または無音の「h」で始まる名詞の前 | cet arbre(この木) |
| 女性単数形 | cette | すべての女性単数名詞の前 | cette voiture(この車) |
| 複数形 (男女共通) | ces | 男女問わず、すべての複数名詞の前 | ces enfants(この子供たち) |
1-2. 例文で確認
1. Ce cahier est bleu.(このノートは青い)
⇒ 「cahier」(ノート)は男性名詞で、子音「c」で始まるので「ce」を使う。
2. Cet arbre est grand.(この木は大きい)
⇒ 「arbre」(木)は男性名詞だが、母音「a」で始まるので「cet」に変わる。
3. Cette pomme est rouge.(このリンゴは赤い)
⇒ 「pomme」(リンゴ)は女性名詞。語頭の音に関わらず「cette」一択。
4. Ces crayons sont gros.(この(色)鉛筆は太い)
⇒ 「crayons」(鉛筆)は複数形。男女関係なく「ces」を選ぶ。
5. Ces chaussures sont à Pegiko.(この靴はぺぎこのものだ)
⇒ 「chaussures」(靴)は女性複数形。複数は性別を問わず「ces」。
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2. なぜ「cet」が必要なのか?音のルールを理解する

「ce」がある場面では「cet」が必要になる。一見すると例外のように思えるが、実はフランス語の大原則に従った、非常に理にかなった変化だ。
フランス語には「音の響き」を何よりも優先するという大原則がある。…と思う
文法規則のかなりの部分は「耳に心地よい響き」を守るために設計されており、「cet」の存在もまさにその一例なのである。
2-1. Hiatus(母音衝突)を避けるために「t」を挿入する
「ce」の発音は [sə](ス)である。この末尾の母音が、次に来る名詞の語頭の母音と直接ぶつかってしまうと、読みにくく耳障りな音になってしまう。
これをHiatus(母音衝突)という。
男性単数名詞が母音または無音の「h」で始まる場合は、
母音衝突を防ぐために「cet」を使う。
【Hiatus回避の仕組み】
ce + ami
→ × ce ami([sə-ami]:母音が衝突して読みにくい)
→ ○ cet ami([sɛ–tami]:「t」が橋渡しをしてスムーズにつながる)
1. Cet appartement est très confortable.(このアパートはとても快適だ)
⇒ 「appartement」(アパート)は男性名詞で母音「a」で始まるため、「cet」を使う。
2. Cet homme est généreux.(この男性は寛大だ)
⇒ 「homme」(男性)は男性名詞で無音の「h」で始まるため、「cet」を使う。
3. Cet étudiant est très sérieux.(この学生はとても真面目だ)
⇒ 「étudiant」(学生)は男性名詞で母音「é」で始まるため、「cet」を使う。
2-2. 「cette」は語頭が母音でも変わらない理由
ここで一つ、重要な対比を確認しておこう。
女性形の「cette」の発音は [sɛt](セット)で、すでに語尾が子音「t」の音で終わっている。
そのため、後ろに母音が来ても自然に「アンシェヌマン」で音がつながるのである。
【女性名詞に「cet」は不要】
○ cette idée([sɛ-tide])(このアイデア) — 「cette」の語尾「t」が橋渡しする
○ cette histoire([sɛ-tistwaʁ])(この話) — 無音の「h」始まりでも「cette」のまま
2-3. 複数形「ces」のリエゾン(義務)
複数形の「ces」の発音は [se] だが、後ろに母音で始まる名詞が来ると「リエゾン」が起こり、綴りにない [z] の音が挿入される。このリエゾンは義務的なものだ。
1. Ces oiseaux chantent bien.(これらの鳥はよく歌う)
⇒ 発音は [se-zwazo]。「ces」と「oiseaux」の間で [z] が入る義務的リエゾン。
2. Ces étudiants sont brillants.(これらの学生は優秀だ)
⇒ 発音は [se-zetydjɑ̃]。リエゾンの [z] が単数との聞き分けの手がかりになる。
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3. 距離感を表す:「-ci」と「-là」の使い方

フランス語の指示形容詞(「ce」「cet」「cette」「ces」)自体には、日本語の「この・その・あの」のような距離感の区別がない。
距離感をあえて強調したい場合は、名詞の後ろに接尾辞を付け加えることで伝えることができる。
3-1. 「-ci」と「-là」の意味
-ci(近くのものだけ=「この〜」)
-là(遠くのものも含められる=「その・あの〜」)
| 表現 | 接尾辞 | ニュアンス |
| ce livre-ci | -ci | (話し手の)近くにある本 |
| ce livre-là | -là | (話し手から)遠くにある本 |
| cette robe-ci | -ci | (手元の)このドレス |
| cette robe-là | -là | (あちらの)あのドレス |
1. Je préfère ce manteau-ci à ce manteau-là.(あのコートよりもこのコートのほうが好きだ)
⇒ 「-ci」と「-là」を対比させることで「この〜 vs あの〜」を明確に表現できる。
2. Pegiko a acheté cette robe-là.(ぺぎこはあのドレスを買った)
⇒ 「-là」を加えることで、話題になっているドレスを特定・強調している。
3-2. 現代口語では「-là」が主流
【注意:現代フランス語の実態】
3-1.で書いたように、教科書的には「-ci」が「近く」、「-là」が「遠く」と習うことが多いが、実際の日常会話では、目の前の物に対しても「-là」を使うことが多い。
たとえば、手に持っているスマホを指して「Ce téléphone-là…」(このスマホなんだけど…)という具合である。
逆に「-ci」は主に「-ciと-là」を対比させたいとき(この〜 vs あの〜)に登場する。
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4. 実践で気をつけたい「落とし穴」

基本をマスターしたら、学習者がよくつまずくポイントを確認しておこう。知っているだけで間違いをぐっと減らせる。
4-1. 指示形容詞「ce」と「C’est」を混同しない
最も混同されやすいのが、指示形容詞の「ce」と、「これは〜です」という意味の構文「C’est」だ。
指示形容詞の「ce」は必ず名詞の前に置く。
「C’est」は単独で文を作る。
| 種類 | 例文 | 意味 |
| 指示形容詞 (名詞修飾) | Ce café est bon. | このコーヒーはおいしい |
| 指示代名詞構文 (単独で文を形成) | C’est un bon café. | これはおいしいコーヒーです |
1. Ce restaurant est excellent.(このレストランは素晴らしい)
⇒ 「ce」の後ろに名詞「restaurant」が続く。「ce」は修飾語。
2. C’est un excellent restaurant.(これは素晴らしいレストランだ)
⇒ 「C’est」は「ce + est」の短縮形で、単独で主語・動詞の役割を果たしている。
4-2. 「有音のh(h aspiré)」には注意
男性単数名詞で「h」で始まる単語には2種類ある。
音が繋がらない「有音のh」(h aspiré)の場合は、母音と同じ扱いにならず、「cet」ではなく「ce」を使う。
✅ Cet homme(この男性)
⇒「homme」は「無音のh」 → 「cet」
✅ Ce héros(このヒーロー)
⇒「héros」は「有音のh」 → 「ce」のまま
4-3. 時間を表す慣用表現
日常会話で頻繁に登場する、時間を指す慣用表現もまとめて覚えておこう。
| フランス語表現 | 意味 | 指示形容詞 |
| ce matin | 今朝 | ce(男性単数・子音始まり) |
| ce soir | 今晩・今夜 | ce(男性単数・子音始まり) |
| cet après-midi (cette après-midiも可) | 今日の午後 | cet(男性単数・母音始まり) |
| cette nuit | 今夜・昨夜 | cette(女性単数) |
| cette semaine | 今週 | cette(女性単数) |
| cette année | 今年 | cette(女性単数) |
1. Peggy a pris son café ce matin.(ぺぎぃは今朝コーヒーを飲んだ)
⇒ 「matin」は男性名詞・子音始まりなので「ce」。
2. Pegiko a un rendez-vous cet après-midi.(ぺぎこは今日の午後に約束がある)
⇒ 「après-midi」は男性名詞・母音始まりなので「cet」。要注意!
3. Il fait très froid cette semaine.(今週はとても寒い)
⇒ 「semaine」は女性名詞なので「cette」。
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5. まとめ

今回は、フランス語の指示形容詞「ce」「cet」「cette」「ces」について、その仕組みと使い方を詳しく見てきた。
- 名詞の性(男性・女性)と数(単数・複数)に合わせて4つの形を使い分ける
- 男性単数の「cet」は、母音衝突(Hiatus)を避けるための「音の橋渡し」として登場する
- 複数形「ces」の後の [z] のリエゾンは義務的であり、単数との聞き分けに不可欠
- 「-ci」(近く)・「-là」(遠く)で距離感を強調できるが、口語では距離に関係なく「-là」が広く使われる
- 「C’est」は指示形容詞ではなく、単独で文を形成する構文なので混同しない
| 形 | 使う場面 | 例 |
| ce | 男性単数・子音始まり | ce livre, ce garçon, ce matin |
| cet | 男性単数・母音または無音のh始まり | cet ami, cet homme, cet après-midi |
| cette | 女性単数(語頭の音に関わらず一律) | cette voiture, cette idée, cette nuit |
| ces | 複数(男女問わず) | ces livres, ces enfants, ces idées |
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6. 練習問題
それでは、今回学んだことを練習問題で確認してみよう。問題を解いてから解答を見るようにしてほしい。
問題1:空欄に適切な指示形容詞(ce / cet / cette / ces)を入れてみよう
① ( ) maison(家 / f)
② ( ) ordinateur(パソコン / m)
③ ( ) garçon(男の子 / m)
④ ( ) écharpe(マフラー / f)
⑤ ( ) hôtel(ホテル / m・無音のh)
⑥ ( ) enfants(子供たち / m.pl)
問題2:次の単数フレーズを複数形に書き換えてみよう
① ce gilet(このベスト)→ ( )
② cet homme(この男性)→ ( )
③ cette robe(このドレス)→ ( )
問題3:選択肢の中から最も適切なものを選んでみよう
① Regarde ( ce / cet ) oiseau !(この・あの鳥を見て!)
② ( Ce / C’est ) café est délicieux.(このコーヒーはとても美味しい)
③ Peggy aime beaucoup ( cet / ce ) après-midi en ville.(ぺぎぃはこの街での午後がとても好きだ)
④ ( Ces / Cette ) histoires sont passionnantes.(これら・それらの話はとても面白い)
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解答と解説
問題1の解答
① 正解:cette maison
⇒ 「maison」(家)は女性名詞。女性単数には「cette」を使う。
② 正解:cet ordinateur
⇒ 「ordinateur」(パソコン)は男性名詞かつ母音「o」で始まる。Hiatus回避のため「cet」。
③ 正解:ce garçon
⇒ 「garçon」(男の子)は男性名詞かつ子音「g」で始まる。「ce」を使う。
④ 正解:cette écharpe
⇒ 「écharpe」(マフラー)は女性名詞。母音始まりでも女性名詞は「cette」のまま。
⑤ 正解:cet hôtel
⇒ 「hôtel」(ホテル)は男性名詞かつ無音のhで始まる。「cet」を使う。
⑥ 正解:ces enfants
⇒ 「enfants」(子供たち)は複数形。性別に関わらず「ces」を使う。
問題2の解答
① 正解:ces gilets
⇒ 複数形は性別を問わず「ces」一択。名詞に「s」を付けることも忘れずに。
② 正解:ces hommes
⇒ 単数で「cet」を使っていても、複数になれば「ces」。発音は義務的リエゾンで [se-zɔm]。
③ 正解:ces robes
⇒ 女性名詞でも複数形は「ces」。
問題3の解答
① 正解:Regarde cet oiseau !
⇒ 「oiseau」(鳥)は男性名詞かつ母音「o」で始まる。「cet」を使う。
② 正解:Ce café est délicieux.
⇒ 後ろに名詞「café」が続くので、指示形容詞「Ce」が正解。「C’est」は名詞の前には置けない。
③ 正解:Pegg aime beaucoup cet après-midi en ville.
⇒ 「après-midi」は男性名詞かつ母音「a」で始まる。「cet」を使う。間違えやすいポイント!
④ 正解:Ces histoires sont passionnantes.
⇒ 「histoires」(話)は複数形。性別を問わず「ces」を使う。
他のフランス語文法に関する記事は以下のリンクからチェックしてみてほしい。
https://onsenpeggy.com/grammaire-francaise-avec-peggy/
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