さて、ぺ千代(ぺちよ)ちゃん育成日記の第15話である。

前回の記事では、ぺ千代ちゃんがはまったフランス語の歌についてたっぷり語ったが、今回はガラッと趣向を変えて――フランス語で否定文に答えるときの「Oui」「Non」「Si」の使い分け問題についてお話ししようと思う。

少し前の第13話では、ぺ千代ちゃんが「Oui」をなかなか言えなかった話を書いた。あれからしばらく経ち、ようやくぺ千代ちゃんも「Oui」を言えるようになってきた。(ぺぎぃは内心飛び跳ねていた)

しかし、「Oui」が言えるようになったとたん、新たな問題が浮かび上がってきた。

本記事の内容
  • 日本語とフランス語の「はい/いいえ」――否定文での”逆転”を整理
  • 「Si(スィ)」――フランス語特有の「いや、違う!」の言い方
  • ぺ千代ちゃんの実際のエピソードと間違いを紹介
  • ぬいぐるみ作戦と、ぺぎぃとしての向き合い方
ちなみに、ぺぎぃはフランス生まれ・フランス育ちの日仏ハーフで、ぺ千代ちゃんにはフランス語で話しかけるようにしている。ぺぎこちゃんは日本語担当。ぺ千代ちゃんは現在3歳半で、今のところ日本語の方が圧倒的に強い。(フランス語の出番は主にぺぎぃとの会話+ぬいぐるみタイム)
ぺぎこ
ぺぎこ
ようやく「Oui」を言えるようになったと思ったら、また新しい問題が出てきたのね……
フランス語OuiとNonを3歳半で習得した順序の違いを解説するバイリンガル育児イラスト
【3歳半】フランス語のOuiよりNonを先に習得した理由|日仏ハーフ体験記⑬日仏ハーフの筆者が3歳半の息子「ぺ千代」ちゃんの体験を紹介。フランス語の「Non」が「Oui」より約2年早く習得された理由を音の難しさ・コミュニケーション必要性・感情表現の3つの仮説で考察。バイリンガル育児中のパパママ必見!...

①日本語とフランス語:「はい」「いいえ」が逆転する瞬間

日本語とフランス語のはいいいえの使い方の違いを表現したイラスト

まず、そもそもの話から整理しよう。

日本語とフランス語の「はい」「いいえ」の使い方には、大きな違いがある。

肯定文(〜ですか?)で聞く場合は、両言語でほぼ同じ感覚で答えられる。

質問(肯定形)日本語の答えフランス語の答え
Est-ce que tu as aimé la piscine?(プール好きだった?)はい / いいえOui / Non

ここまでは問題ない。

問題は否定文(〜じゃないの?)で聞く場合だ。

質問(否定形)日本語の答えフランス語の答え
Tu n’as pas aimé la piscine?(プール好きじゃなかった?)はい(好きじゃなかった)
いいえ(実は好きだった)
Non(好きじゃなかった)
Si(実は好きだった)

ここで日本語では「はい」にあたるところが、フランス語では「Non」になるという逆転が起きる。

言い換えると:

  • 日本語「はい(その通り、好きじゃなかった)」= フランス語「Non(好きじゃなかった)」
  • 日本語「いいえ(実は好きだった)」= フランス語「Si(好きだったよ!)」

「Si(スィ)」は、フランス語特有の言葉。

否定文や否定的な発言に対して「いや、そんなことない!」と否定文を肯定文にして反論するときに使う。

英語にも日本語にもこれに相当する一語がないので、最初は少し面食らうかもしれない。(ただし、英語では「Yes」をそのまま使える)

例:「プールが好きじゃなかったんじゃないの?」に対して
→「Si!(いや、好きだったよ!)」と返す。

否定文への答え方まとめ

Non = 否定文の内容をそのまま否定文として同意(そう、〜じゃない)
Si = 否定文の内容を肯定文に書き換えて反論(いや、〜だよ!)
Oui = 否定文には使わない

ぺぎぃ
ぺぎぃ
「Non」に続く文は必ず否定文。「Si」に続く文は必ず肯定文。こう考えると少し理屈が理解できるかもしれないね。

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②ぺ千代ちゃんの「Oui」問題――実際のエピソード

プールの前で首をかしげるペンギンの赤ちゃんのイラスト

さて、ぺ千代ちゃんが実際にどんな場面で間違えているのか、いくつか紹介しよう。

ちなみに、ぺ千代ちゃんの場合は肯定文(〜好き?)のときは合っていることが多い。問題は否定文(〜じゃないの?)のときである。

1-1. エピソード①:プールが怖かった話

少し前、ぺ千代ちゃんを生まれて初めてプールに連れて行った。

結果は…明らかに好きじゃなかった。ペンギンなのに。(笑)

そこで、ぺちぺちと歩いてきて、小声で「怖かったよ」と教えてくれた。

その後、ぺぎぃがフランス語で聞いてみた。

  • ぺぎぃ:「Est-ce que tu as aimé la piscine?(プール好きだった?)」
  • ぺ千代:「Non.」 ✅

おっ、正解!(正しい「Non」の使い方である)

では次に、否定文で聞いてみた。

  • ぺぎぃ:「Tu n’as pas aimé?(好きじゃなかったの?)」
  • ぺ千代:「Oui.」 ❌

あ……。

ぺ千代ちゃんの頭の中では、「好きじゃなかった → はい → Oui」という日本語ロジックが動いているのだ。

フランス語の場合、「Tu n’as pas aimé?」に対して「好きじゃなかった」と伝えたければ、「Non」と答えなければならない。「Oui」は否定文には使えないのだ。

1-2. エピソード②:公園から帰りたくない

続いて、これはよくある日常の一コマ。

公園でぺぎぃと遊ぶのが大好きなため、出かけると中々帰りたがらないぺ千代ちゃんである。

…とはいえ、もうお昼時だ。試しにぺぎぃは聞いてみる:

  • ぺぎぃ:「Pechiyo, tu ne veux pas rentrer?(帰りたくないの?)」
  • ぺ千代:「Oui, tu ne veux pas rentrer!」 ❌

これも、間違いである。

ぺ千代ちゃんの気持ちは「帰りたくないに決まってるじゃん!」という感じだろう。表情からも意味は伝わる。

しかしフランス語では:

  • 「帰りたくない」と伝えたいなら →「Non, je ne veux pas rentrer.(帰りたくない)」
  • 「帰りたい」なら →「Si, je veux rentrer!(帰りたいよ!)」

が本来正しいのである。

ぺぎこ
ぺぎこ
「Non, tu ne veux pas rentrer」の「tu」の部分も間違いよね?
ぺぎぃ
ぺぎぃ
そうだね!そこは過去の別記事でも紹介した、主語の使い方の間違いだね。ぺ千代ちゃんはまだ一人称の「je」をうまく使いこなせず、ぺぎぃの文をそのままオウム返しにする傾向にあるよ。
フランス語の否定形ne...pasの構造を説明するイラスト
【3歳】フランス語の間違い5選!日仏ハーフの子供あるある|日仏バイリンガル体験記⑪3歳の日仏ハーフ「ぺ千代」ちゃんがフランス語でやりがちな間違いを5つ紹介。否定形「ne...pas」の位置、前置詞の欠落、人称の混同など、フランス語初心者にも参考になるポイント満載。...

1-3. エピソード③:お水いる?いらない?

トドメ?にもう一つ。お茶やお水を飲むかどうか聞く場面でも同じ現象が起きる。

肯定文の「Tu veux de l’eau?(お水欲しい?)」の場合は問題なく、ぺ千代ちゃんは「Oui」か「Non」で正しく答えられることが多い。

ところが否定文になると:

  • ぺぎぃ:「Tu ne veux pas d’eau?(お水いらないの?)」
  • ぺ千代:「Oui.」 ❌
    →本当は「うん、いらない」と答えたいのだが、これだとフランス語では意味をなさない。フランス語の場合は「Si(いる)」か「Non(いらない)」の二択しかない。

ここでも「お水はいらない → うん、いらない → Oui」という日本語の論理がそのまま誤ってフランス語に持ち込まれている。

本来であれば、水がいらないのなら「Non, je n’en veux pas」が正しい回答である。

そして「いや、飲みたいよ」と伝えるなら「Si, j’en veux」と言わなければならない。

この逆転現象は、フランス語を学んでいる日本語話者のあいだでもあるあるな間違いだ。ぺぎぃも昔、動画やライブ配信でこの話をしたことがある気がする。(4〜5年前の話なので記憶がうっすらだが)ぺ千代ちゃんが間違えて当然、ともいえる。
ぺぎこ
ぺぎこ
これ、大人でも間違えるわよね……。ぺぎこも良くこんがらがるのよ。
ぺぎぃ
ぺぎぃ
そう!フランス語学習者なら大人でもこんがらがる。だからぺ千代ちゃんが間違えるのは全然おかしくないし、「Oui」をちゃんと使おうとしているだけで、一歩前進ではあるんだよ。

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③ぺぎぃとしての向き合い方――ぬいぐるみ作戦

ぬいぐるみを使ってフランス語を楽しく練習する様子のイラスト

では、ぺぎぃはこの問題にどう向き合っていけば良いのか?

2-1. 直接的な訂正はしない

ぺ千代ちゃんが「Oui」と間違えて答えたとき、ぺぎぃは「それは間違いだよ」とは言わないようにしている。

せっかく頑張って答えているのに水を差したくないし、ペ千代ちゃんには論理的に理解してもらうというよりも、ネイティブとしての感覚を自然に身に着けてほしいからである。

「あ、なるほどね」とさらっと受け流しつつ、さりげなく正しい形で言い直してあげてから会話を続けるようにしている。

2-2. 日本語でフランス語を教えたくない

ちょっと難しいところなのだが、「フランス語の否定文ではNonかSiを使うんだよ」と日本語で説明することはしたくない、とぺぎぃは思っている。

なぜかというと、それをやると「日本語の頭でフランス語を考える」という習慣が定着してしまうからだ。

文法の答え合わせを日本語でしてしまうと、フランス語がいつまでも「翻訳ゲーム」になってしまう。

ぺぎこ
ぺぎこ
フランス語で説明すれば良いんじゃないの?
ぺぎぃ
ぺぎぃ
迷いどころだけど、たぶん、力説するよりは自然なお手本をさりげなく伝える方が定着するような予感がするんだ。

2-3. ぬいぐるみ作戦

しかし、ぺぎぃがさりげなく伝えるのにも限度がある。

また、ぺぎぃが一方的にペ千代ちゃんにはなしても「Non」と「Si」の使い分けがいまいち伝わらなかったり、良い例文や登場シーンが作り出せなかったりする。

そこで活躍するのが、ぺ千代ちゃんの大好きなぬいぐるみたちだ。

ペ千代の友達パンダとオラフ(『アナと雪の女王』より)
やることぺぎぃがぬいぐるみを動かし、一人三役でフランス語の会話を成立させて、否定文での正しい答え方を自然に「見せる」
ねらいぺ千代ちゃんが「あ、こういうときはOuiじゃなくてNonなんだ」「Si」も使えるのか!と自然に気づくように仕向ける

ぬいぐるみがお互いにどう答えるかを見て、ぺ千代ちゃんがじわじわ学んでいる様子もあり、ぺぎぃとしては割と手応えを感じている方法だ。

前述の主語の間違いについても、割と有効で、最近では「moi」や「toi」の違いにもようやく気づいてくれた。(これはまた別途記事にしよう…)

下のようなやり取りも、パンダとオラフで再現することで、ぺ千代ちゃんにもウケており、ペ千代ちゃん自ら「Sisisisisisi!!!」と参戦してくることもある。

ぬいぐるみ作戦のポイント:
・日本語の説明ゼロで、フランス語のやり取りを「見せる」
・ぺ千代ちゃんの観察力を信じる
・「正解を教える」より「正しい場面に触れる機会を増やす」
ぺぎぃ
ぺぎぃ
ぺ千代ちゃんの周りにフランス語を話す人がいないから、ぬいぐるみたちには大活躍してもらっている。パンダもオラフも、最近フランス語がうまくなってきたよ。
ぺぎこ
ぺぎこ
ぺぎぃがオラフを動かしながらフランス語でしゃべってるの、端から見るとちょっとシュールよね。

まとめ:自信満々に間違えるぺ千代ちゃんが、ある意味最強

虹を見つめるぺ千代ちゃん・成長と学びの旅のイラスト

最後に、ぺぎぃが一番印象に残っていることを共有したい。

ぺ千代ちゃんは、「Oui!」と間違えて答えているとき、一切間違えたことに気づいていない。そして自信満々だ。

これ、実はとても大事なことだとぺぎぃは思っている。

言語習得において、「間違えることを恐れない」というのは何よりの武器になる。

大人になると「間違えたら恥ずかしい」「正しく言わなきゃ」と萎縮してしまうことが多い。ぺ千代ちゃんにはそのブレーキが一切ないため、どんどん新しい学びを吸収していく。

フランス語を学んでいる方も、ぜひ今回の「Non / Si」の使い分けの話だけに留まらず、間違えても気にせず自信を持って話してみてほしい。

一言の「Oui」「Non」で迷うなら、文で返してしまえば意味は相手にちゃんと伝わる。

フランス語学習のヒント:

「Non か Si か迷う…」ときは、文で返すと間違えにくい!

  • 「好きじゃなかった」と伝えたい:「Non, je n’ai pas aimé.」
  • 「実は好きだった!」と言いたい:「Si, j’ai aimé!」
ぺぎこ&ぺぎぃ
ぺぎこ&ぺぎぃ
同じような経験をしているバイリンガル育児中の方や、フランス語を勉強している方からのコメント大歓迎!またいつでも遊びに来てね!
フランス語OuiとNonを3歳半で習得した順序の違いを解説するバイリンガル育児イラスト
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