ぺぎぃの語学論

完璧なバイリンガルとは一体何なのか?【ぺぎぃの語学論】

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本章では、「完璧なバイリンガル」の語学力について話そうと思う。そのために、まずは、一般人「外国語をマスターしたバイリンガル」の語学レベルについておさらいをしよう。
上記2種類のバイリンガルの違いについては、前章で詳しく説明してあるので、まだ読んでいない方は読んでいただきたい。

一般人の語学レベル

はじめに、一般人の語学レベルをおさらいしてみよう。ここで言う「一般人」とは、バイリンガルでない人のことを示す。すなわち、まだ外国語を1つもマスターしていない人のことである。

一般人の場合、言語を習得するための脳のキャパシティは最大値が100である。母国語の言語レベルは通常60~80の間にあり、外国語を1つもマスターしていないことから、外国語レベルは45以下となる。これを図に表すと以下のようになる。

母国語と外国語に対する脳のキャパシティ(=言語レベル)については、こちらの章に詳しく記載してあるので、興味がある方は見てほしい。

「外国語をマスターしたバイリンガル」の語学レベル

「外国語をマスターしたバイリンガル」の場合、一般人の段階から修行を積んで、外国語を1つマスターしていることになる。
つまり、母国語レベルは60以上のまま、1つの外国語レベルが45に到達した段階である。図に表すと以下のようになる。

ここで注目していただきたいのは、外国語レベルが50を超えることはないが、母国語レベルが外国語レベルに影響されることもないというところである。ここが、「完璧なバイリンガル」の言語レベルを検討するうえで非常に重要なポイントとなってくる。

もう一度言おう。「外国語としての言語をマスターしてなったバイリンガル」の場合、どんなに外国語を勉強しようとも、言語レベルが50を超えることはない。
しかし、外国語をいくら勉強したからと言って、それに影響されて母国語レベルが下がることもない。

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「完璧なバイリンガル」の言語レベル

母国語が2つある

「完璧なバイリンガル」においては、前章で説明した通り、「外国語をマスターしたバイリンガル」と根本的につくりが異なっている。なぜなら、「外国語をマスターしたバイリンガル」が、文字通り1つの外国語をゼロから勉強して習得したのに対し、「完璧なバイリンガル」の場合は、物心つく頃から既に2つの言語を両方とも母国語として身に着けてしまっているからである。

したがって、「完璧なバイリンガル」の場合、言語レベルは母国語・外国語として分かれるのではなく、母国語1・母国語2として分かれる。これは大きな違いである。図に表すと以下のようになる。

ここで思い出してほしいのが、母国語に対する言語レベルは一般的に60以上であることである。つまり、「完璧なバイリンガル」の場合、母国語1の言語レベルは60以上、母国語2の言語レベルも60以上となる。したがって、一般人「外国語をマスターしたバイリンガル」の場合、言語を習得するための脳のキャパシティの最大値が100であるのに対し、「完璧なバイリンガル」の場合は、脳のキャパシティが100以上ある計算になる。

脳のキャパシティ

本章では、日仏ハーフであるたわしこと、ぺぎぃの経験をもとに、「完璧なバイリンガル」の母国語レベルを検討してみた。

ぺぎぃの場合、フランスで生まれ育ったことにより、母国語1=フランス語となっている。しかし、幼少の頃から日本人の母親によって日本語を鍛えられていたおかげで、物心がつく頃から、日本語が第2の母国語として脳内にインプットされている。つまり母国語2=日本語である。図に表すと以下の通りとなる。

ここで1点注意していただきたいことがある。「完璧なバイリンガル」だからと言って、フランス語や日本語の片方だけを母国語する人に母国語レベルが匹敵しているかというと、実はそうではない。ここの説明が難しい。

例えばぺぎぃの場合、フランス語や日本語の言語レベルは「フランス語や日本語を外国語としてマスターしたバイリンガルのレベル」は超えているが、「一般のフランス人や日本人の母国語レベル」は超えることが難しい。これは脳のキャパシティを2つに分けているため、起こる現象である。わかりやすく図にまとめると、下のようになる。

このどっちつかずの緑の部分を、「母国語同士の足の引っ張り合い」と呼ぶことにする。

母国語同士の足の引っ張り合い

先ほどの上の図でわかるかと思うが、「完璧なバイリンガル」の場合、母国語が同じキャパシティを支配しているため、片方の言語レベルが上がると、その分、もう片方の言語レベルが下がってしまう。これが非常に厄介である。

例えば、ぺぎぃの場合、フランスの生活が長く続いてしまうと、フランス語の言語レベルは一般人の最大値80に近くなる。しかし、その反面、長らく使っていない日本語の言語レベルが一般人の最低値60に近づいてしまう。その逆もまたしかり。つまり、一般人が母国語に対して持っている脳のキャパシティの最大値を100とすると、「完璧なバイリンガル」は最大値が140であるが、その面積を2つの母国語で取り合っていることになる。

さらに言えば、どんなに両方の言語レベルを同時に上げようと試みても、ある一定値まで来ると、脳のキャパシティが飽和されてしまうため、フランス語・日本語のどちらともレベル70という中途半端なレベル止まりとなってしまう。

もちろん、レベル70というのは、「同じ言語を外国語として学ぶ一般の人」から見れば、「完璧なバイリンガル」の言語レベルは母国語レベルの最低値であるレベル60を超えているため、当然十分すぎるレベルとして捉えられる。

しかし、「同じ言語を母国語として話す人」、特に言語レベルが70~80の人から見れば、「完璧なバイリンガル」の言語レベル60~70というのは、今一つしっくりこない、問題なく話せるけれど、何か中途半端なもののように映ってしまう。それは、語彙力の問題であったり、書ける漢字の数の問題であったり、はたまた読んだことのある書籍や知っている有名人の数であったりもする。

地上から山の上は見えないが、山の上からも頭上の雲の上は見えないのである。

つまり、「完璧なバイリンガル」というのは、その言語を外国語として学んでいる人から見て「完璧」なのであって、その言語を母国語として話している人から見たら「完璧ではない」ことが多い。これは実は結構勘違いされている、「完璧なバイリンガル」の悩みの内の1つなのだとぺぎぃは思っている。

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おまけ:トリリンガルの言語レベル

最後におまけとして、2つ以上の言語を話せる人の言語レベルを検討してみようと思う。バイリンガルのときと同じように、3つの言語をぺらぺらに話せるようになっている人のことをトリリンガルと呼ぶ。これは、生まれながらにして3つの言語を話すことができる「完璧なトリリンガル」と、「外国語をマスターしてなったトリリンガル」とを含む。

「完璧なトリリンガル」

ぺぎぃは「完璧なトリリンガル」ではないので、これは飽くまで予想であるが、おそらく「完璧なトリリンガル」の言語レベルも「完璧なバイリンガル」のものと同じく、それぞれの母国語が足を引っ張りあっている状態だと考える。

つまり、バイリンガルのときと同じように、「完璧なトリリンガル」の脳のキャパシティが飽和された状態の母国語レベルをそれぞれ70であると仮定すると、「完璧なトリリンガル」が母国語に費やせる脳のキャパシティの最大値は3×70=210ということになる。その中で、各母国語に対する面積が割り振られていることになる。

これはまたこれで、苦労が多いのではないかとたわしは思う。

「外国語をマスターしたトリリンガル」

「外国語をマスターしたトリリンガル」の場合、2つのケースが想定される。1つ目は、外国語を2つマスターした母国語+外国語1+外国語2の場合。2つ目は、外国語を1つマスターしたバイリンガル、母国語1+母国語2+外国語の場合である。

この場合の計算方法は、いたって簡単である。1つ目のケースでは、外国語1、外国語2ともに言語レベルを最大値の50として、あとは母国語レベルを書けばよい。2つ目のケースでは、母国語1・母国語2のレベルの和を最大値2×70=140として、外国語の言語レベルを50とすればよいのである。

それ以降、クァドリンガル、クィンティリンガル。。。

以上で、「完璧なトリリンガル」「外国語をマスターしたトリリンガル」の言語レベルを見てきた。生まれながらにして、3つ以上の言語をいっぺんに身に着けていくのは理屈上可能であろうが、非常に稀であると思う。しかし、各言語を「外国語」として捉えてマスターしていけば、4カ国語を話せるクァドリリンガル、5カ国語を話せるクィンティリンガルになることも夢ではない。

その場合、母国語レベルの計算方法は今まで通りとして、外国語レベルの計算方法は上限50の一定でよいのだろうか?たとえ外国語であろうと、4つも5つも学んでいってしまったら、そのうち、脳のキャパシティが飽和され、外国語同士の足の引っ張り合いが発生してしまう気がする。

ま、まだぺぎぃはその領域に達していないので、それはその時にまた考えることにしよう。
では、また。

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POSTED COMMENT

  1. ごまふあざらし より:

    ぺぎぃさん
    いつも丁寧にお返事をありがとうございます。
    ぺぎぃさんのお母様はどのようにぺぎぃさんに日本語を教えられていましたか?
    お母様が日本人とはいえ、フランスでお育ちになりながらも、これほどの日本語をキープされているのは本当にすごいことと思います。
    いつか、ぺぎぃさんのフランス語講座が書籍化されることを願ってます。
    それでは失礼いたします。

    • onsenpeggy より:

      ごまふあざらしさん、
      こちらこそ、いつも嬉しいコメントをありがとうございます。
      日本語については、物心ついたころに玩具としてマグネットボード(あの磁石で字や絵を書いて消せるボードのようなもの)を与えられ、なぞって練習する「平仮名シート」と「カタカナシート」を使って遊んでいました。たぶん、そのおかげで幼稚園を卒業するころには、フランス語も日本語もかなり習得できていたかと思います。あとは、母親と常に日本語で話したり、たまに漢字ドリルをやらされたりしながら育ちました。
      ちなみに、幼い頃(幼稚園~小学校低学年あたり)は本を読むのが好きだったので、童話などは日本語の本を与えられて読んでいたり、フリガナ付きの漫画やゲーム(ドラゴンボールやゲームボーイなど)で遊びながら育ったので、気が付くころには結構自然と日本語を身に着けていました。(*^▽^*)

      フランス語の方は、幼稚園から大学院までずっとフランス人のクラスメートや先生に囲まれ過ごしてきたので、いつから話せているのかすら覚えていません。

      書籍化いいですねぇ!(笑)
      いつかできるように頑張ります!

    • ごまふあざらし より:

      ぺぎぃさん
      返信していただき、ありがとうございます。
      お母様と日本語での会話を続けられてきたのですね。まさに「継続は力なり」ですね。
      私の子どもたちはフランスで育ちながらも母語は日本語となって、語彙が足りないもののフランス語も話すことができます。でも、学校のfrançais の授業は苦手で特に下の子は苦労してます。
      子どもたちを見ていると、外国語が話せることと外国語で学問をするということの違いを実感します。
      ぺぎぃさんは日本で育った日本人よりも上手に日本語を使えていると思いますよ \( ˆoˆ )/
      語学は終わりがありませんね。ぺぎぃさん、これからも更新をお願いします。

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