最近、ふと思った。
フランス語の形容詞は名詞の前にくるのだろうか?それとも後だろうか?
例えば「きれいな薔薇」と言いたいときに「la rose belle」と言うべきなのか、それとも「la belle rose」と言うべきなのか?何かルールのようなものは存在しないのか?
それを今回の記事では一緒に見ていきたいと思う。
- フランス語で名詞の前に使われる形容詞
- フランス語で名詞の後に使われる形容詞
今まで、自然にフランス語を使いこなす中で、全く考えずに使っていた形容詞。しかし、よく考えてみると、フランス語を勉強している人にとっては、かなり頭を悩ませる部分なのではないか?
例えば、英語では「赤い車」と言う時にも、「大きな車」と言うときにも、「A red car」や「A big car」と形容詞は名詞の前に位置することになる。
しかし、フランス語の場合は、「une voiture rouge(赤い車)」と「une grande voiture(大きな車)」と場合によっては形容詞が名詞の前に来たり、形容詞が名詞の後に来たりと、使い方が一定ではない。
そこで、今回の記事では、フランス語の形容詞を使う際に、名詞の前に持ってくるべきなのか、それとも名詞の後に持ってくるべきなのか、何かしらのルールがないか書いてみることにする。
最後まで読めば、おそらく今まで感じていた疑問などが、いくらかはスッキリすることだろう。
フランス語で名詞の前に位置する形容詞
少しネットで検索してみたところ、通常フランス語では、「日常的に頻繁に用いられたりする短い形容詞」は名詞の前に置くとされているようだ。
しかし、フランス語を勉強したての人や、フランスで暮らさない人にとっては、「何をもって形容詞が頻繁に用いられているのかを判断するのか?」という疑問が拭えない。
また、場合によっては「un plat chaud(熱い食事)」や「un cahier neuf(新しいノート)」などのように、日常的に使う短い形容詞であっても、名詞の後に位置させることがある。
つまり、、必ずしもこの「日常的に用いられる短い形容詞は名詞の前に置く」というルールを鵜呑みにする必要はないとぺぎぃは考えてみた。
では、一体どういうときに形容詞を名詞の前に持ってくるのか?
それをこの章で見ていくとしよう。
1-1. 「大きい」「小さい」などのサイズに関する形容詞
基本ルール
「サイズ」に関する形容詞は名詞の前に位置させることが多い。
勿論、中には名詞の後に位置させることが可能な形容詞も存在するが、一般的に「サイズ」に関する形容詞は名詞の前に位置させても問題はないと考えればよい。
それは例えば「petit」や「grand」のような一般的な形容詞であったり、「énorme」や「gigantesque」などのもう少し珍しい形容詞の場合にも、同じように名詞の前に位置させることができる。
サイズに関する形容詞を用いた例
Un petit avion(小さな飛行機)
⇒ 短い形容詞なので、「Un avion petit」は響きが悪い
Un grand bateau(大きな船)
⇒ 短い形容詞なので、「Un bateau grand」は響きが悪い
Un minuscule insecte(すごく小さな虫)
⇒ 長い形容詞なので、「Un insecte minuscule」もOK
Un gigantesque château(巨大な城)
⇒ 長い形容詞なので、「Un château gigantesque」もOK
個人的なイメージでは、「長い」や「短い」に関する形容詞は、例え短くても名詞の後に持ってくることが多い。
(例)
△ Un court voyage(短い旅) ⇒ 旅の「サイズ」が短いというニュアンス
〇 Un voyage court(短い旅) ⇒ 短い「カテゴリー」の旅というニュアンス
△ Des longs cheveux(長い髪) ⇒ 髪の「サイズ」が長いというニュアンス
〇 Des cheveux longs(長い髪) ⇒ 長い「タイプ」の髪というニュアンス
これは後ほど、第2章で話すことになる、「カテゴリー」に関する形容詞や「形」に関する形容詞の使い方と似ているからだと思われる。
1-2. 「古い」「美しい」など外観に関する形容詞
基本ルール
「外観」に関する形容詞は、名詞の前に位置させることが多い。
これも当然例外が存在するが、一般的に「外観」に関する形容詞は名詞の前に位置させることが多い。
外観に関する形容詞を用いた例
Une vieille maison(古い家)
⇒ 見た目が古いという話。「Une maison vieille」は響きが悪い。
Une belle voiture(美しい車)
⇒ 見た目が美しいという話。「Une voiture belle」は響きが悪い。
De jolies fleurs(きれいな花)
⇒ 見た目がきれいという話。「Des fleurs jolies」は響きが悪い。
1-3. 「良い/悪い」「本物/偽物」などの本質にかかわる形容詞
基本ルール
「良い/悪い」や「本物/偽物」などの本質に関する形容詞は名詞の前に位置させることが多い。
例えば「un bon …」や「une mauvaise …」、「un véritable …」や「une fausse …」など、物事の本質に関する形容詞には、名詞の前に位置させるものが多いと思われる。
これらも、名詞の後に位置させても文法的には問題ないのだが、前のほうが響きが良いということである。
本質に関する形容詞を用いた例
Une bonne blague(良い冗談/面白い冗談)
⇒ 「Une blague bonne」でも問題はないのだが、響きが悪い。
Une mauvaise habitude(悪い癖)
⇒ 「Une habitude mauvaise」でも問題はないのだが、響きが悪い。
Un vrai policier(本物の警察官)
⇒ 「Un policier vrai」とはあまり言わない。
Une fausse monnaie(偽通貨)
⇒ 「Une monnaie fausse」とは文法的にOKだが、あまり言わない。
Une agréable journée(良い一日)
⇒ 「Une journée agréable」でも問題ないが、「良い一日を~」と伝えるときには一般的には「Une agréable journée」と言う。
Un gentil garçon(優しい男の子/性格の良い男の子)
⇒ こちらも「Un garçon gentil」で問題ないのだが、響きとしては「Un gentil garçon」の方が良い。
1-4. 「一番」「二番」など順番に関係する形容詞
基本ルール
物事の「順番」に関係する形容詞は名詞の前に位置させる。
クラスの生徒を成績順に並べたり、座っている位置を前から数えたりなど、複数あるものの順番について話すときには「le premier …」、「le deuxième …」、「le dernier …」などと順番の形容詞を名詞の前に位置させることになる。
順番に関する形容詞を用いた例
Le premier tournant(一つ目の曲がり角)
⇒ 「Le tournant premier」とは絶対に言わない。
La deuxième chaise en partant de la droite(右から数えて二つ目の椅子)
⇒ 「La chaise deuxième」とは言わない。
La dernière semaine du mois(この月の最後の週)
⇒ これは「月に四週ある中の最後の週」という意味なので、「時期」というよりは「順番」の話であるため「La semaine dernière」とはならない。
La prochaine fois(次回)
⇒ 場合によっては「La fois prochaine」と言うことも可能。「次回は~」と「時期」について表現したいときには「La fois prochaine」、「今回があって、次回は~」と「順番」について話しているときには「La prochaine fois」。まぁ、これは細かい話なので、時に気にする必要はない。
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フランス語で名詞の後に位置する形容詞
続いて、名詞の後にくる形容詞にはどのようなものがあるのかを、本章では見ていくとしよう。
2-1. 「色」や「形」に関する形容詞
基本ルール
「色」や「形」に関する形容詞は名詞の後に位置させる。
これは特に深く説明する必要がないので、簡単である。
基本的に「色」や「形」に関する形容詞は、全て名詞の後ろに位置させると覚えておけばよい。
色や形に関する形容詞を用いた例
Une voiture rouge(赤い車)
⇒ 「Une rouge voiture」とは絶対に言わない
Un grand ciel bleu(大きな青空)
⇒ 「grand」に関しては、第1章で話した「サイズに関する形容詞」なので、名詞の前。「bleu」は色に関する形容詞なので、名詞の後に位置させる。
Du vin blanc(白ワイン)
⇒ 「Du blanc vin」とは言わない。
Une forme carrée(四角い形)
⇒ 「Une carrée forme」とは絶対に言わない。
Un mouvement circulaire(円形の動作)
⇒ 「Un circulaire mouvement」とは言わない。
2-2. 「国籍」に関する形容詞
基本ルール
「国籍」に関する形容詞は名詞の後に位置させる。
「色」に続いて、「国籍」に関する形容詞。
これらも名詞の後ろに位置させることになる。
国籍に関する形容詞を用いた例
La langue française(フランス語)
⇒ 「La française langue」とは言わない
Un homme japonais(日本人の男性)
⇒ 「Un japonais homme」とは言わない。仮に言うとしても、それは「男性の日本人」と「Un japonais」が名詞で、「homme」の部分が形容詞扱いにされる場合のみである。まぁ、珍しい言い方なのであまり使わない。
2-3. 「暑い」や「寒い」など温度に関する形容詞
基本ルール
「温度」に関する形容詞は名詞の後に位置させることが多い。
温度に関係する形容詞は、基本的に名詞の後に位置させることが多い。というか、名詞の前に位置させる例が思い浮かばない。
温度に関係する形容詞には「chaud(熱い/暑い)」や「froid(寒い)」の他にも「glacial(極寒の~)」、「brûlant(焼けるくらい熱い)」、「tiède(ぬるい)」などを挙げることができる。
温度に関する形容詞を用いた例
Un plat chaud(温かい食事)
⇒ 「Un chaud plat」とは言わない。
Un hiver froid(寒い冬)
⇒ 「Un froid hiver」とは言わない。
Une température ambiante(常温)
⇒ 「Une ambiante température」とは言わない。
Un bain tiède(ぬるい風呂)
⇒ 「Un tiède bain」とは言わない。
2-4. その他カテゴリー分けができるものに関する形容詞
基本ルール
「カテゴリー」分けができるものに関する形容詞は名詞の後に位置させることが多い。
これは、少し考え方が複雑であるが、基本的に「カテゴリー分けができるもの」に関する形容詞は、名詞の後に位置させることが多いと思われる。
これがどういうことかと言うと、例えば先ほど見てきた「国籍」に関する形容詞もそうであるし、他にも「性格」に関する形容詞や、映画の種類に関する形容詞、音楽の種類に関する形容詞、髪の毛の種類に関する形容詞など、様々存在する。
カテゴリーに関する形容詞を用いた例
Une personne aimable(愛想が良い人)
⇒ 他にも人の性格に関する形容詞に「un homme méchant(意地悪な男性)」、「une fille gentille(優しい女の子)」、「un garçon bavard(お喋りな男の子)」など挙げることができる。
Un roman policier(推理小説)
⇒ 他にも、「un roman comique」、「une pièce tragique」、「un film humoristique」など、カテゴリーに関する形容詞は名詞の後に使うことが多い。
Une musique classique(クラシック音楽)
⇒ 音楽のカテゴリーに関する形容詞なので、名詞の後に位置させる。他にも例えば、「une musique attirante(惹きつける音楽)」、「une musique harmonieuse(調和のとれた音楽)」、「une musique bruyante(うるさい音楽)」など、分別に使えそうな形容詞は全て名詞の後に持ってくる。
Des cheveux frisés(巻き毛の髪/カールした髪)
⇒ 他にも、髪の毛のカテゴリーとして「des cheveux raides」、「des cheveux ondulés」、「des cheveux courts」、「des cheveux longs」などが挙げられる。「court」や「long」に関しては、ここでは第1章で紹介した「サイズ」と言うよりは「髪型のタイプ」として捉えたほうがよい。
一つだけ難しいのが、「性格」に関する形容詞についてである。
例えば、場合によっては「優しいカテゴリーの人」や「意地悪なカテゴリーの人」とカテゴリー分けとして形容詞を用いることもあれば、第1章で紹介したように「優しい人」や「意地悪な人」と本質的な意味で用いられることがある。
その場合、意味合いによって形容詞の位置を変えることも稀にある。
(例)
Une sorcière méchante(意地悪な魔女)
⇒ 「優しい魔女」と「意地悪な魔女」というカテゴリーが存在する中で、「意地悪な魔女」を指している。
Une méchante sorcière(意地悪な魔女)
⇒ 例えば「ヘンゼルとグレーテル」に登場するような、一人の本質的に意地悪な魔女に対して話すとき。
Un chien brave(勇気がある犬) .
⇒ 「あの犬は勇気があるなぁ」と複数の犬が存在する中で、この犬は勇気がある犬だと、カテゴリー付けする場合。
Un brave chien(良い犬)
⇒ 自分の飼い犬など、一匹の犬に対して、この犬は「本質的に良い犬」だという場合。
2-5. 「去年」や「来年」などの時期に関する形容詞
基本ルール
時期に関係する形容詞は名詞の後に位置させることが多い。
前章の1-4.の続きになるが、「la ○○ dernière」や「le ○○ prochain」など、順番を数えるわけではなく、飽くまで時期について話しているときに用いる形容詞は、名詞の後に位置させることが多い。
時期に関する形容詞を用いた例
L’année prochaine(来年)
⇒ 「La prochaine année」とも言えるが、これは「(今年の)次にくる年」という意味で、順番の話に近くなる。
La semaine dernière(先週)
⇒ 「La dernière semaine」という表現も存在するが、これは「最後の週」という意味。
L’hiver prochain(次の冬)
⇒ 確かにこの場合は「次の冬」と訳すしかないので、順番の話に聞こえるかもしれないが、これは飽くまで「冬」という時期について話しているので、形容詞が名詞の後に来ることの方が多い。
La fois suivante(次回)
⇒ 「suivant(e)」を用いる際には、形容詞を必ず名詞の後に置くと思われる。「la suivante fois」とは聞いたことがない。
2-6. 過去分詞で構成される形容詞
基本ルール
過去分詞で構成される形容詞は名詞の後に位置させる。
一般的に、過去分詞のみで成り立っている形容詞は名詞の後に位置させることが多い。
過去分詞で構成される形容詞を用いた例
Une feuille déchirée(破れた紙)
⇒ 動詞「Déchirer(破る)」から。「Une déchirée feuille」とは言えない。
Une bouteille cassée(割れた瓶)
⇒ 動詞「Casser(壊す/割る)」から。「Une cassée bouteille」とは言えない。
Une viande cuite(焼けた肉)
⇒ 動詞「Cuire(焼く)」から。「Une cuite viande」とは言えない。
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おまけ:複数の形容詞を用いる場合の順序
さて、「名詞の前に置く形容詞」と「名詞の後に置く形容詞」の違いがわかってきたところで、形容詞が複数連続して用いられているときにはどちらの形容詞を前に置けばよいのだろうか?
例えば「une belle voiture rouge」と言う場合には:
- 「belle」は1-2.で紹介した「外観」に関する形容詞 ⇒ 名詞の前
- 「rouge」は2-1.で紹介した「色」に関する形容詞 ⇒ 名前の後
となるので、あまり迷うことはないが、同じ「名詞の前に位置する形容詞」が二つ連なるときや、「名詞の後に位置する形容詞」が二つ連なるときはどうすればよいのだろうか?
3-1.「カテゴリー」に関する形容詞がある場合
複数の形容詞の中に「カテゴリー」に関する形容詞がある場合は、その形容詞を先に置く。
どういうことかと言うと、例えば2-4.で紹介した例の「un roman policier(推理小説)」や「une musique classique(クラシック音楽)」はカテゴリーに関する形容詞を含んでいる。
別な言い方をすれば、これらの言葉は「名詞+形容詞」の形で既に一つの「推理小説」や「クラシック音楽」という大きな言葉を成しているのである。
つまり、この場合、更に別な形容詞が付け足される際には:
- un roman policier très intéressant(非常に面白い推理小説)
- une musique classique motivante(モチベーションがあがるクラシック音楽)
のように、まずはカテゴリーに関する形容詞を置いてから、その後ろに次の形容詞を持ってくることになる。
例文
Une voiture électrique bleue(青い電気自動車)
⇒ 「電気自動車」という括りがあって、そのカテゴリーの「青い」バージョンという意味。「Une voiture bleue électrique」と言えなくもないが、この場合は「電気で走る青い自動車」となるので、少し不自然である。
Un homme japonais gentil(優しい日本人の男性)
⇒ 「日本人男性」という括りがあって、その中でも優しい人という意味。「Un homme gentil japonais」とも言えないこともないが「日本人の優しい男性」と響きが些か不自然になる。
3-2.「Bon」「Beau」「Joli」を含む場合
複数の形容詞の中に「Bon」「Beau」「Joli」がある場合には、これらの形容詞が先にくる。
これは主に名詞の前に形容詞が来た場合の話になるが、例えば「une jolie petite maison(きれいな小さな家)」と言うとき、「une petite jolie maison」と言うことは絶対にできない。
理由付けは難しいが、とりあえず響きがとても悪いと言っておこう。
なので、「Bon」や「Beau」、「Joli」が名詞につく場合には、一番先頭に置くことを覚えておこう。
ただし、「善良な」という意味で用いるときの「Bon(ne)」の場合は名詞の後に来ることもある。例えば「un homme bon」など。
例文
Un beau grand jardin(きれいな広い庭)
⇒ 「Un grand beau jardin」とは言わない。
Une jolie petite fille(きれいな小さな女の子)
⇒ 「Une petite jolie fille」とは言わない。ただし、「Une petite fille(小さな女の子)」を一つの単語として捉えて、「Une petite fille jolie」とは言えなくもない。
Un bon gros steak(とても大きなステーキ)
⇒ 「Un gros bon steak」とは言わない。「Un gros steak bon」とは、少し不自然感が拭えないが、言えなくもない。ただし、意味は「大きな美味しいステーキ」となる。
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