「Bien que と Même si の意味の違いがわからない」
「Quoi que とか Quoique って何?」
今回の記事では以上の読者の疑問に答えていきたいと思う。
- フランス語の接続詞「Bien que」と「Quoique」の使い方
- フランス語の接続詞「Même si」の使い方
- フランス語の接続詞「Quoi que」の使い方
これらの接続詞は意味合いや使い方が非常に良く似ているため、混同してしまう方も多い。
かく言うと、実は30年間フランス語に携わってきたぺぎぃもこれらの接続詞の使い分けが瞬時にできるわけではなく、油断をすると「Bien que」と「Même si」を入れ違えていたりする。
それだけ使い方が難しい接続詞と言うことである。
しかし、心配はいらない。皆さんのためにも、ぺぎぃ自身のためにも、この記事で「Bien que」や「Quoique」、「Même si」と「Quoi que」の違いをはっきりと説明するとしよう。
最後までお読みいただければ、おそらく今後はもう二度と「Bien que」と「Même si」を混同したり、「Quoique」なのか「Quoi que」なのか迷うことはなくなるだろう。
目次
譲歩を表す接続詞「Bien que」と「Quoique」の使い方
この章では接続詞の「Bien que」と「Quoique」の意味や使い方について説明する。
冒頭からはっきりと言ってしまうと、この「Bien que」と「Quoique」は全く同じ意味なので、殆どの場合は入れ替えて使うことができる。
1-1. 接続詞「Bien que」と「Quoique」の使い方
今まで他の記事で、対立を表す接続詞や譲歩を表す接続詞について解説してきたが、あえて「Bien que」と「Quoique」を分けたのには一つ理由がある。
それは、これらの譲歩の接続詞は万能で、文に対しても、形容詞に対しても、現在分詞に対しても用いることができるという便利さがある反面、動詞と一緒に使用する際には必ず接続法を用いなければならないという面倒な点があるからである。
これは、以前紹介した「Malgré le fait que」や「En dépit du fait que」とも非常に良く似ている。これについては「1-2.」で話すことにしよう。
譲歩の接続詞「Bien que」と「Quoique」の基本的な使い方
一つの文(A)に対して、「~にもかかわらず」と制限を加えるときに、
(A)+「Bien que」+(接続法の文/形容詞)
(A)+「Quoique」+(接続法の文/形容詞)
もしくは、
「Bien que」+(接続法の文/現在分詞/形容詞),(A)
「Quoique」+(接続法の文/現在分詞/形容詞),(A)
と接続詞「Bien que」や接続詞「Quoique」使うことができる。
実際に例文で説明した方がわかりやすいと思うので、以下の文を見てもらいたい。
(A)Peggy ne sait pas nager.(ぺぎぃは泳げません)
(B)Peggy est un pingouin.(ぺぎぃはペンギンです)
この二つの文を自然に繋げるとすると、
(A)+(B)Peggy est un pingouin mais ne sait pas nager.(ぺぎぃはペンギンですが、泳ぐことができません)
となる。フランス語の口頭会話ではこのように「Mais(しかし)」を用いることが多い。
しかし、筆記の文章や、よりフォーマルな会話の場合には「Bien que」や「Quoi que」を用いて文(A)と(B)を繋げることもできる:
(A)+(B)Bien que / Quoique Peggy soit un pingouin, il ne sait pas nager.(ぺぎぃはペンギンであるのにもかかわらず、泳ぐことができません)
(A)+(B)Peggy ne sait pas nager, bien qu’ / quoiqu’il soit un pingouin.(ぺぎぃは泳ぐことができません、ペンギンであるのにもかかわらず)
おわかりだろうか?
本当に微妙なニュアンスだが、ただの「Mais(しかし)」を使った文よりは、文(A)と文(B)の関連性がよりはっきりとしたような印象を覚える。
また、これらの接続詞は「形容詞」や「現在分詞」と一緒に使うこともできる優れものである。接続法の活用が面倒くさい人にはこちらの方法をおすすめする。
(A)+(B)Bien qu’ / Quoiqu’ étant un pingouin, Peggy ne sait pas nager.(ペンギンであるのにもかかわらず、ぺぎぃは泳ぐことができません)
(A)+(B)Peggy ne sait pas nager, bien qu’ / quoiqu’étant un pingouin.(ぺぎぃは泳ぐことができません、ペンギンであるのにもかかわらず)
譲歩の接続詞「Bien que」や「Quoique」を用いた例文
1. Bien qu’il pleuve dehors, nous allons quand même partir en randonnée.(外は雨が降っているにもかかわらず、それでも我々はハイキングに出かけます)
2. Quoiqu’un peu cher, ce restaurant est très bon.(少し高いが、このレストランはとても美味しい)
3. Quoiqu’étant japonaise, Pegiko parle très bien le français.(日本人であるのにもかかわらず、ぺぎこはフランス語がとても上手です)
4. Peggy est bien arrivé à l’heure du rendez-vous, bien qu’il ait passé toute la soirée à jouer aux jeux vidéos.(一晩中テレビゲームで遊んでいたのにも関わらず、ぺぎぃは予定どおり待ち合わせの時間に来た)
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1-2. 接続詞「Malgré」との使い分け方
別な記事で、譲歩を表す接続詞として「Malgré」という言葉を紹介したが、「Bien que / Quoique」と「Malgré」の違いは一体何だろうか?
ここではその点について少しだけ触れておこう。
譲歩の接続詞「Malgré」の基本的な使い方
一つの文(A)に対して、「~にもかかわらず」と(B)の名詞要素が連なったとき、
(A)+「Malgré(~にもかかわらず)」+(名詞B)
若しくは
「Malgré(~にもかかわらず)」+(名詞B), (A)
と現実を否定する接続詞「Malgré」を使うことができる。
ここで「Bien que / Quoique」と大きく異なるのが、接続詞「Malgré」は必ず名詞と持ちなければならないということ。単純に二つの文を繋げるのに使うことはできない。
フランス人でも、たまに「Malgré que」という接続詞モドキを用いている人がいるが、あれは明らかに間違いであるため、できれば避けるべきである。
どうしても名詞ではなく、二つの文を繋げたいのであれば、「Bien que / Quoique」を用いるか、「Malgré le fait que(~という事実にもかかわらず)」と無理やり文を名詞要素に変換しなければならない。
(A)+(B)Malgré qu’ étant un pingouin, Peggy ne sait pas nager.(ペンギンであるのにもかかわらず、ぺぎぃは泳ぐことができません)
(A)+(B)Malgré qu’ il soit un pingouin, Peggy ne sait pas nager.(ぺぎぃは泳ぐことができません、ペンギンであるのにもかかわらず)
(A)+(B)Malgré le fait qu’il soit un pingouin, Peggy ne sait pas nager.(ぺんぎんであるという事実にもかかわらず、ぺぎぃは泳ぐことができません)
譲歩の接続詞「Malgré」を用いた例文
先程「Bien que / Quoique」のときに用いた例文を「Malgré」を使って書いてみると以下のようになる:
1. Malgré la pluie dehors, nous allons quand même partir en randonnée.(外は雨にもかかわらず、それでも我々はハイキングに出かけます)
2. Malgré son prix un peu élevé, ce restaurant est très bon.(少し高い値段だが、このレストランはとても美味しい)
3. Malgré sa nationalité japonaise, Pegiko parle très bien le français.(日本人であるのにもかかわらず、ぺぎこはフランス語がとても上手です)
⇒ 直訳すると:「日本国籍にもかかわらず~」
4. Peggy est bien arrivé à l’heure du rendez-vous, malgré le fait qu’il ait passé toute la soirée à jouer aux jeux vidéos.(一晩中テレビゲームで遊んでいたという事実にも関わらず、ぺぎぃは予定どおり待ち合わせの時間に来た)
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譲歩や仮定を表す接続詞「Même si」の使い方
この章では譲歩や仮定を表す接続詞「Même si」の意味と使い方について解説していこう。
フランス人でも「Bien que」と「Même si」を混同しがちな人が多いが、実はこの二つの言葉は少しニュアンスが異なるので、一体どう使い分ければよいか、一緒に見ていくとしよう。
譲歩の接続詞「Même si」の基本的な使い方
一つの文(A)に対して、「~だとしても」と制限を加えるときに、
(A)+「Même si」+(直説法の文)
もしくは、
「Même si」+(直説法の文),(A)
と接続詞「Même si」を使うことができる。
ここまでは接続法が直説法になっただけで、「Bien que」の使い方と殆ど同じである。
「Même si」は口頭会話で使うことが多い
例えば、「Bien que」の説明で用いた例文を再び使うと:
(A)Peggy ne sait pas nager.(ぺぎぃは泳げません)
(B)Peggy est un pingouin.(ぺぎぃはペンギンです)
(A)+(B)Même si Peggy est un pingouin, il ne sait pas nager.(ぺぎぃはペンギンだけれども、泳ぐことができません)
(A)+(B)Peggy ne sait pas nager, même si c’est un pingouin.(ぺぎぃは泳ぐことができません、ペンギンであるのにもかかわらず)
となる。
唯一「Bien que / Quoique」と違うとすれば、接続法を用いる「Bien que」と「Quoique」は筆記で良く用いられるが、「Même si」は口頭会話で用いるほうが多いというくらいである。
「Bien que」の方が堅いイメージ
ニュアンスで言えば「Bien que」の方が、「Même si」よりも若干堅いイメージがあるせいか、印象が強い傾向にある。
例えば、「Bien que Peggy soit un pingouin」と言うと「ぺぎぃはペンギンなのに大したことねぇな」みたいな響きになるのに対して、「Même si Peggy est un pingouin」だと、「ぺぎぃはペンギンだけど~」と責めているニュアンスが少し減る気がする。
「Même si」は形容詞や現在分詞と使うことができない
ここで唯一大きな違いがあるとすれば、「Même si」を用いた場合には、「形容詞」や「現在分詞」と一緒に使うことはできない。必ず従属節が必要になってくるというところである。
(A)+(B)Bien qu’ / Quoiqu’ étant un pingouin, Peggy ne sait pas nager.(ペンギンであるのにもかかわらず、ぺぎぃは泳ぐことができません)
(A)+(B)Même si étant un pingouin, Peggy ne sait pas nager.(ペンギンだけれど、ぺぎぃは泳ぐことができません)
接続詞「Même si」のもう一つの使い方:仮定の話
ここでは、「Bien que」や「Quoi que」とは異なる「Même si」の使い方を紹介する。
一つの文(A)に対して、「~だとしても」と仮定の話をするときに、
(A)+「Même si」+(直説法の文)
もしくは、
「Même si」+(直説法の文),(A)
と接続詞「Même si」を使うこともできる。
実は「Même si」には仮定を表す言葉「Si」が使われているので、英語の「Even if」のような使い方もできるのである。
例えば、以下の二つの文を見てもらいたい:
(A)Il pleut dehors.(外は雨です)
(B)Pegiko partira se promener.(ぺぎこは散歩に出かけます)
この二つの文を「Bien que」と「Même si」を用いてそれぞれ繋げると以下のようになる:
(A)+(B)Bien qu’il pleuve dehors, Pegiko partira se promener.(外は雨であるにもかかわらず、ぺぎこは散歩に出かけます)
(A)+(B)Même s’il pleut dehors, Pegiko partira se promener.(外は雨であっても、ぺぎこは散歩にでかけます)
このニュアンスの違いがおわかりだろうか?
「Bien que」を用いた一つ目の文では、「外は雨であるのにもかかわらず」、つまり「雨が降っている」という事実が存在するのに対し、「Même si」を用いた二つ目の文では、「外は雨であっても」と、仮に「雨が降っている」という仮定の上での話をしているのである。
この仮定のニュアンスは、接続詞「Même si」でしか伝えることができない要素である。
譲歩や仮定の接続詞「Même si」を用いた例文
1. Même s’il fait beau demain, nous n’irons pas camper.(たとえ明日良い天気でも、キャンプには行きません)
⇒ 仮定の話
2. Même si c’est un peu cher, ce restaurant est très bon.(少し高くても、このレストランはとても美味しいです)
3. Même si elle est japonaise, Pegiko parle très bien le français.(日本人であったとしても、ぺぎこはフランス語がとても上手です)
4. Peggy a réussi ses examens, même s’il n’a pas du tout révisé.(ぺぎぃは全く復習しなくても、試験に合格した)
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譲歩の接続詞「Quoi que」の使い方
そして最後に、接続詞「Quoi que」について少し触れておきたいと思う。
この接続詞も実は「譲歩の接続詞」の括りに入れることができるのだが、1章目で紹介した「Quoique」とは全くの別物であり、「Quoi」と「que」を分離した接続詞である。
譲歩の接続詞「Quoi que」の基本的な使い方
接続詞「Quoi que」は「何を○○ても~」という意味。「○○」の部分には接続法の動詞が入る:
「Quoi que(何を○○ても~)」+(主語)+(動詞/接続法)
この「何を○○ても」というのは、例えば:
- 「何をしても~」: Quoi que tu fasses, …
- 「何を食べても~」: Quoi que tu manges, …
- 「何が起きても~」: Quoi qu’il arrive, …
- 「何があったとしても~」: Quoi qu’il puisse arriver, …
のことを表す。
他にも似たような言葉に「où que(どこに○○ても~)」や「quel que(どれに○○ても~)」など、色々な表現が存在するが、かなり複雑で長い話なので、ここでは割愛させていただく。
興味がある人がいれば、また別途それに特化した記事を書くことにしよう。
譲歩の接続詞「Quoi que」を用いた例文
1. Il pleut dehors, mais nous allons quand même partir en randonnée quoi qu’il arrive.(外は雨ですが、それでも我々はハイキングに出かけます、何があっても)
2. Quoi qu’il arrive, nous allons partir en randonnée.(何があっても、我々はハイキングに出かけます)
3. Quoi que je fasse, je ne pourrais jamais séduire Pegiko. (何をやっても、ぺぎこを口説き落とすことは不可能だ)
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日仏の辞書には【Malgré que 接続法】が載ってるので、間違いではないと思います。。。プチロワです。
Malgré que 接続法 (〜にもかかわらず)
Malgré que ce livre ne puisse lui servir à rien, il ne veut le prêter à personne.
その本は役に立たないのだが、彼は誰にも貸そうとしない。
といった例文がありました。
もう一つは
malgré que j’en aie
malgré qu’il en ait
(否が応でも)
ちなみにラルースの仏仏辞典にも例文の記載がありました。
注意書きで、筆記への使用に限定されている旨と
bien que と quoique が好まれると書いてありました。
いつも参考にさせていただいているので恐縮なのですが、存在しないは言い過ぎかなとの印象を受けました。間違いではないかと思いますが、そう思われるくらいあまり使われないと言った感じですかね?
Pommeさん、コメントありがとうございます!(*^▽^*)
ご指摘ありがとうございます。確かに「存在しない」は少し言い過ぎたかもしれません。「できれば避けるべきである」という言い回しに文を訂正しておきました。
おっしゃるとおり「Malgré que」を用いている辞書も存在するのですが、ぺぎぃの考えではおそらく「間違いでありながらも、日常に浸透してしまった意味」を説明しているのかなと思っています。
アカデミーフランセーズも公式サイトでも念のため調べてみたのですが、Pommeさんが書かれているように「Malgré que j’en aie」という特殊な使われ方は存在するのですが、「avoir動詞以外と使われることは本来はない」と記されているようです。
(参考:https://www.dictionnaire-academie.fr/article/QDL048 )
なかなか難しいですよね。ぺぎぃの周りにも「malgré que」を普通に使っている人は結構います。🌷
ぺぎぃ
ぺぎぃさん、ぺぎこさん
フランス語のサイトを立ち上げてくださって、ありがとうございます。かれこれ、南仏に10年以上滞在しているのですが、家族間では日本語100%ですし、周りには日本人も多くいるので、フランス語が満足にできなくてもなんとか生活できてしまいました。
日本人には分かりにくい条件法や接続法を日本人の感覚に合わせて説明してくださっているので、今まで見てきた動画やサイトよりもすご〜く分かりやすくて納得できます!ありがとうございます!
外出制限中ですが、どうぞお身体に気をつけてお過ごし下さい。
ごまふあざらしさん、
大変嬉しいコメントをありがとうございます。
そうですよね、家族間では日本語100%というのはぺぎぃもぺぎこも良くわかります。我々も家では100%日本語なので、似たような方に対してせめて少しでもフランス語の手助けができればなと思ってサイトを立ち上げました。お役に立てたようでなによりです!
他にも、説明してほしい文法やわからないフレーズなどがございましたら遠慮なくおっしゃってください。
あざらしさんもどうか外出制限中、お身体にお気をつけて!南仏はまだ暖かそうで羨ましいですね。(*^▽^*)