【3歳】ぺ千代ちゃんの言い間違えは天才の証!?認知科学者が解く子供の言葉|体験記⑫
さて、ぺ千代(ぺちよ)ちゃん育成日記の第12話である。
前回の記事では、ぺ千代ちゃんがフランス語で返してくる時の間違いを紹介したが、そのときに日本語の言葉の言い間違えについてもいくつか述べた。
なかなか興味深い研究材料(?)だと思ったため、今回は ぺ千代ちゃんの日本語の言い間違えを大特集しよう!
- ぺ千代ちゃんの言い間違えコレクション大公開
- 今井むつみ教授が解き明かす「子供の言葉の学び方」
- ぺ千代ちゃんの間違いを認知科学で分析してみた
- 「おじさん→おうじさま」問題の深すぎる考察
「みろこん」「がじゃいも」「たぽかー」――どれも「なんのこと?」と首をかしげたくなるが、実はこれ全部、ぺ千代ちゃんが何かを指して言っているちゃんとした言葉なのである。
これらの言い間違えは単なるたどたどしさではなく、実は子供の脳が言語の構造を必死に学ぼうとする高度な知的プロセスの現れなのではないか?
今回は、ぺ千代ちゃんの爆笑言い間違えコレクションを紹介しながら、その裏に潜む言語習得の秘密に迫っていこう!
目次
①ぺ千代ちゃんの言い間違えコレクション
まずはぺ千代ちゃんのこれまでの言い間違えリストをここに記録しておく。
ただ、並べてみるだけでは面白くないので、ぺぎぃなりに間違えのタイプ別に部類分けして考察してみた。
1-1. 音節が入れ替わるシリーズ
ぺ千代ちゃんの言い間違えで最も多いのが、音節の順番が入れ替わるタイプだ。
ネットを検索してみると、この現象はどうやら言語学では「音位転換(メタセシス)」と呼ばれるらしい。(なんかかっこいい)
ただし、本来は子供限定ではなく、「雰囲気(ふんいき)」を「ふいんき」と読むようなときのように、単語の内部で音素が入れ替わる現象そのものを指すようだ。
| ぺ千代ちゃんが言った言葉 | 本当の言葉 | どこが入れ替わった? |
|---|---|---|
| みろこん | リモコン | 「リモ」→「みろ」(音節が逆転) |
| がじゃいも | ジャガイモ | 「ジャガ」→「がじゃ」(音節が逆転) |
| おすくり | お薬(おくすり) | 「くす」→「すく」(音節が逆転) |
| たぽかー | パトカー | 「パト」→「たぽ」(音節が逆転) |
| とうころもし | とうもろこし | 「もろこし」→「ころもし」(中間音節が入れ替わり) |
| ぶっころり | ブロッコリー | 「ブロッコ」→「ぶっころ」(音節の組み替え) |
1-2. 音が変わるシリーズ
次は、特定の音が別の音にすり替わるタイプ。音節の順番は合っているが、子音や母音が微妙にずれているのが特徴だ。
| ぺ千代ちゃんが言った言葉 | 本当の言葉 | どこが変わった? |
|---|---|---|
| たまぼこ | かまぼこ | 「か」→「た」(破裂音の混同) |
| もし | 牛(うし) | 「う」→「も」(母音+子音の変化) ※なお「虫」はちゃんと「むし」と言う |
| ばんぼう | マンボウ | 「マン」→「ばん」(鼻音の変化) |
| ベレベーター | エレベーター | 「エレ」→「べれ」(語頭への子音付加) |
| ばぶしい | 眩しい(まぶしい) | 「ま」→「ば」(唇の位置はほぼ同じ) |
| よぼれる | よごれる | 「ご」→「ぼ」(有声音同士の混同) |
| おぼじろい | 面白い(おもしろい) | 「も」→「ぼ」、「しろ」→「じろ」 |
| ひゃくさい | ハクサイ | 「ハク」→「ひゃく」(百=ひゃく、と混同?) |
| しゅうちゃじょう | 駐車場(ちゅうしゃじょう) | 語頭音節の入れ替えと変形 |
| てちゅした | 靴下(くつした) | 「くつ」→「てちゅ」(音全体の変形) |
ちなみに「ひゃくさい(ハクサイ)」は、数の「百(ひゃく)」と混じったのではないかとぺぎぃは推測している。
実際に、最近の幼稚園の3歳児検診では「何歳?」という質問に対して「百歳!」と答えていた。高麗人参ならず、高齢野菜というわけだ。(ちなみに「お名前は?」という質問に対しては「スーパーマン」と答えていた)
1-3. 省略・圧縮するシリーズ
ここは長い言葉を自分が言いやすい形にコンパクトにまとめてしまうタイプ。子供なりの「効率化」である。
| ぺ千代ちゃんが言った言葉 | 本当の言葉 | どこが変わった? |
|---|---|---|
| ぱんまん | アンパンマン | 語頭の「アン」を省略して「パンマン」に。そこからさらに「ぱんまん」へ |
| みみく | 見に行く | 「見に行く(みにいく)」が「みみく」に圧縮 |
| しのごと | 仕事 | 「し」と「ごと」を音として知っているが、「し(の)ご(と)」に |
1-4. 意味の混乱・昇格いたします!シリーズ
最後に、ちょっとした変化球だが、言葉そのものを入れ替えてしまっている例をいくつかあげよう。ぺ千代ちゃんの意味の混乱・昇格シリーズである。
なかにはなかなか面白いものもある。
| ぺ千代ちゃんが言った言葉 | 本当の言葉 | どこが変わった? |
|---|---|---|
| おうじさま | おじさん | 「おじさんが座りたがっているよ(だから席をゆずってね)」と話しかけたときに「え?王子様だの?」と返してきた |
| おひめさま | お雛様(おひなさま) | お雛様のことをしきりに「お姫様」と言っていた。これは難しいため、ぺぎぃも幼いころに間違っていたかもしれない。 |
| おにいさん | 鬼さん | 「良い子にしていないと鬼さんが来るよ」というフレーズと「えらいね!もうお兄さんだね!」というフレーズがごちゃ混ぜになり、なんでも「お兄さんになっている」 |
「おじ(oji)」→「おうじ(ouji)」という音の似た言葉の「上書き」なのだが、後ほど今井教授の理論で解説すると実はすごく知的な間違いだということが分かる。楽しみにしてほしい。
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②今井むつみ教授が解き明かす「言葉の学び方」

ぺ千代ちゃんの言い間違えを笑ったところで、次はいよいよ「なぜ子供はこんな間違いをするのか」という話に入ろう。
慶應義塾大学の今井むつみ教授は、認知科学・発達心理学の分野で日本語習得の研究を長年行ってきた研究者だ。
前回の記事のコメント欄で、ぺぎぃの読者の方から日本語の助数詞に関する今井教授のYouTube解説動画を紹介されて面白いと思ったので、いくつかの要素をここで紹介させてほしい。
2-1. 「名詞」と「助数詞」は全然違う難しさ
今井教授によると、子供が言葉を習得するスピードは言葉の種類によって大きく異なるという。
| 言葉の種類 | 学習の優先度 | 理由 |
| 名詞(リンゴ、犬など) | 最優先 | 「リンゴ!」と叫べばリンゴがもらえる。生存に直結している |
| 助数詞(〜冊、〜匹など) | 後回し | 「リンゴ、2」で伝わってしまうため、なくても困らない |
つまり、子供の脳は「伝わる言葉から優先的に覚える」という非常に合理的な戦略をとっているのだ。
2-2. 子供の脳はスーパーコンピューター
では、子供はどうやって言葉を学んでいるのか。今井教授は「統計的確率計算」という言葉で説明している。
子供は、毎日大量に浴びる言葉のシャワーの中から、「どんなパターンが何回出てくるか」を無意識に計算し続けているのだという。
難しく聞こえるが、要は以下のようなプロセスだ:
- 「音の塊(チャンク)」として丸暗記する
→ 「ひとり」「ふたり」を「人を数えるシステム」ではなく、決まった言い回しとしてそのまま覚える。 - パターンを統計的に見つける
→ 「あれ、数字の後には絶対なんか変な言葉が来るな…?」という法則に気づく。 - 未知の場面に勇気を持って適用する(過剰拡張)
→ 「じゃあ葉っぱも『3人』でいいか」と既知のパターンを広げる。
この最後のステップ「間違えながら広げる」ことを、認知科学では「過剰拡張(かじょうかくちょう)」と呼ぶらしい。これが子供の言い間違えのほとんどの正体である。
2-3. 「形式を先に、意味を後から」という逆説
今井教授の研究でぺぎぃが最も驚いたのが、「子供は意味を分からないまま言葉を使い始める」という事実だ。
例えば「100万部突破!」という広告フレーズを完璧に真似できる子供がいても、それは「音の塊」として丸暗記しているだけで、「100万」「部」「突破」それぞれの意味を理解しているわけではない。
言葉の習得は、
「音の形を覚える」→「使いながら意味を充填していく」
という順序で進む。
まず「型」を使い、後から「中身(意味)」を埋めていくのだ。
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③ぺ千代ちゃんの言い間違えを認知科学で分析する

さて、いよいよぺ千代ちゃんの言い間違えに今井教授の理論を当てはめてみよう。
眺めてみると、それぞれの間違いにはちゃんとした「理由」があることが分かる。
3-1. 音節転置は「チャンクの組み替えエラー」
「みろこん(リモコン)」「がじゃいも(ジャガイモ)」「たぽかー(パトカー)」のような音節転置は、今井教授の「チャンク理論」で説明できるのではないかと考えてみた。
要は、子供の脳は言葉を「音の塊(チャンク)」として処理する。「リモコン」なら「リモ」と「コン」という2つのチャンクとして認識しているのだが、発声する段階でその順番が入れ替わってしまうというわけだ。
- リモコン
→ 「見る」と「コン」の2チャンク
→ みろこん - パトカー
→ 「オムツがたぽたぽ」の「たぽ」と「カー」の2チャンク
→ たぽかー - ジャガイモ
→ 「がじゃがじゃ」(?)と「イモ」の2チャンク
→ がじゃいも
ちなみに、これは言葉の音的な構造を正しく認識している証拠でもあるのではないだろうか?
「リモコン」を4文字バラバラに覚えていたら「ろみこん」とか「こんみろ」になるはずで、「見る・見ろ」と「コン」という音節のまとまりを正確に把握しているからこそ、チャンク単位で入れ替わるのだ。(…と勝手に自分の息子のことを天才だと勘違いしているぺぎぃは親馬鹿なのだろうか?)
3-2. 「だの?」問題は”本物の”過剰拡張
今回の言い間違えの中で、今井教授の「過剰拡張」理論にもっとも直接的に当てはまるのが、ぺ千代ちゃんの文法の間違いだ。
- 何が好きの?(→正しくは「何が好きなの?」)
- なんで〇〇だの?(→正しくは「なんで〇〇なの?」)
- ペ千代ちゃんのだの!(→正しくは「ペ千代ちゃんのなの!」)
ぺ千代ちゃんはすでに「〜の?」「〜なの?」という疑問文の「型」を知っている。
しかし、「〜だ」という断定表現も日常的によく耳にするため、自己主張したいときに「だ」を「の」の前に追加するという間違いが起きている。
これは今井教授の言う「形式の先行習得」そのものだ。
「〜の?」という形式はすでに知っている
+「だ」という強調形式もよく聞く
↓
「強調したいときは『だの?』でいいか!」という過剰拡張
日本語の「なの」と「だの」の使い分けは、実はかなり高度な文法知識が要る。
本来言うべき「ぺ千代ちゃんなの!」の「な」は、名詞の後に「の」が来るときに挿入される特別な形(いわゆる「判定詞」の連体形)で、大人でも直感的に使えるまでに時間がかかる部分だ。
3-3. 「おじさん」が「おうじさま」になった件
そしてぺぎぃにとって今回最大のハイライトが、この「おじさん→おうじさま昇格事件」である。
これを今井教授の「形式を先に、意味を後から充填する」理論で読み解くと、実にドラマチックな話が浮かび上がってくる。
ぺ千代ちゃんの頭の中を想像してみよう:
- 「おじさん」という音をはじめて耳にする
- 同時に「おうじさま」という音も絵本やアニメで耳にしている
- 「おじ(oji)」と「おうじ(ouji)」は音が似ている!
- 「おうじさま」の方がより豪華で印象に残る言葉だ
- → 「おじさん」と呼ぶべき場面で「おうじさま」を充填してしまう
これは今井教授が述べる「意味の充填(いみのじゅうてん)」という現象そのものである。
音の形は正確に把握している(「おじ」≒「おうじ」)が、どちらの言葉をどの文脈で使うべきかという意味の体系がまだ確立されていないため、よりインパクトの強い方の言葉で代替してしまったわけだ。
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④言い間違えは「学びの足跡」であるということ

今井教授の言葉を借りるなら、子供の言い間違えは「ランダムなミスではなく、知的な推論の結果」である。
ぺ千代ちゃんの言い間違えたちも、すべてそうだ。
- 「みろこん」は、音節という言語の単位を正しく認識している証拠
- 「だの?」は、疑問文の構造を学ぼうとしている証拠
- 「おうじさま」は、音の類似性に基づいて語彙を整理しようとしている証拠
どれも、混沌とした世界に秩序を見つけようとする、子供ならではの知的な挑戦の跡なのである。
そして今井教授によれば、この「使いながら意味を充填していく(形式の先行習得)」プロセスは、子供だけの特権ではない。
私たち大人も新しい言語を習得するときに同じプロセスを経る。
難しそうな熟語を文脈から雰囲気で使ってみて、後から意味を理解する――誰でも一度は経験があるはずだ。
おわりに
ぺ千代ちゃんはきっとこれからも色々な言い間違えをしてくれるだろう。
そのたびにぺぎぃは「これはどんな推論の結果だろう?」と考えながら、その成長の軌跡をこのブログに記録していこうと思っている。
フランス語を学びに来た方も、そうでない読者の方も「この親馬鹿ペンギンは一体何を語っているんだ」とならずに、温かい目線で見守ってほしいのである。
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前回お送りした動画をご覧下さりありがとうございました。そして今回のブログでそのことにも触れながら、ぺ千代ちゃんの言い間違いの分析をされていてとても興味深かったです。
今後のブログも楽しみにしています。
そしてフランス語も今まで同様こちらを参考に更に勉強を進めていきます。