その他、ぺぎぃの雑学

漫画『ワンパンマン』のトレーニングがフランスで人気な理由

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『ワンパンマン』という漫画をご存じだろうか?

『ワンパンマン』とは、日本の漫画家ONEによる作品を原作とし、テレビ東京等によって2015年に第1期がアニメ放送され、第2期が2019年にアニメ放送された、海外でも有名なアニメ漫画である。

あらゆる敵をパンチ1発(ワンパン)で倒してしまういう最強のヒーロー「サイタマ」が主人公のギャグアクション漫画であり、フランスでも今までにない異種な漫画として絶大な人気を誇っている。

今回はその『ワンパンマン』トレーニング方法をもとに、最近フランスや各国で流行っている「ワンパンマン・チャレンジ」なるものについて紹介していこう。

「ワンパンマン・チャレンジ」はフランスで人気

ぺぎぃも職場で同僚に紹介されて初めて知ったが、最近では「ワンパンマン・チャレンジ」なるものが、特にフランスのネットユーザーを通じて話題となっているようだ。

1. 「ワンパンマン・チャレンジ」とは

・ チャレンジの内容

「ワンパンマン・チャレンジ」とは、アニメ漫画『ワンパンマン』の主人公である最強のヒーローこと「サイタマ」が文字通り最強になるために行ったトレーニング方法を実際に数週間または数カ月にわたり行ってみるというものである。

内容としては、「腕立て伏せ100回、上体起こし100回、スクワット100回、ランニング10kmを毎日行うというもの。

「ワンパンマン」の主人公サイタマは実際にこれらを3年間毎日欠かさず継続することによって、ただの凡人から、日本だけでなくフランスでも名前が知れ渡る、世界最強のヒーローになることができたのだ。

・ フランスでの人気

彼の根性と忍耐のみで最強となった姿は、フランス語を話すディスカッションプラットフォーム、ソーシャルネットワークまたはゲームフォーラムでも話題となり、今現在ファンクラブまで出来つつある。フランスのオタクの力は恐ろしい!

また、ボディービルを専門とするオンラインコミュニティでは、ワンパンマンが一般的なベンチマークになっており、例えば YouTubeに投稿されているビデオの数十件「ワンパンマン・チャレンジ」に捧げられているというから驚きだ。

無名・有名なユーチューバーを問わずに、サイタマのトレーニング方法を数日間または数カ月間行っているところを自分自身で撮影し、その動画をネット上にアップロードしているのである。

有名な人では、初めて「ワンパンマン・チャレンジ」をフランスで試みたSaitamaV2氏や、筋トレユーチューバーとして有名なTibo Inshape氏などがいる。

2. 専門家の反応は?

では、実際にこの「ワンパンマン・チャレンジ」が有効であるのか、フランスの専門家の意見はどうだろうか?

・ 単調すぎて意味がない

例えば、ボディービルの元世界チャンピオンでフランスチームのコーチであるFrédéric Mompo氏はこう言っている:

« Pour progresser en musculation, il faut travailler avec des charges. Au début, on peut travailler au poids de corps, mais c’est insuffisant ensuite. Faire 100 squats, c’est dur quand on n’a jamais fait de sport, mais ensuite, quand on a progressé, on peut facilement en faire 200 ! »(筋トレで体を成長させていくには、体に負荷をかけなければならない。初めのころは、自分の体と重力だけでトレーニングを進めていくことができるが、そのままでは不不十分だ。全くスポーツをしたことがない人にとってはスクワットを100回行うことは難しいだろうが、少しトレーニングをすれば200回行うことも簡単だよ!)」(参考:https://www.lemonde.fr/pixels/article/2020/03/08/one-punch-man-la-star-des-salles-de-muscu-en-ligne_6032240_4408996.html

…つまり、スポーツ初心者にとっては多少有効な方法ではあるかもしれないが、世界最強の男になるためのトレーニング方法としては、若干物足りないようだ。

・ やる気を出すなら、他の漫画の方がよい

また、スポーツ系ユーチューバーであり、日本のポップカルチャー目線からManga Workoutというチャンネルを運営しているIdriss氏もこう語っている:

「確かにサイタマの成長ぶりは、スポーツ初心者にとってはやる気のスイッチを押す手助けとなるかもしれないが、この漫画のやり方では長続きしない人が多く出てしまう。なぜなら、サイタマの努力や成長は漫画の冒頭でしか紹介されず、その後は全く努力をしなくても世界最強の男として君臨してしまっているからだ。」

Idriss氏は、トレーニングをして最強を目指すのならなら、『ワンパンマン』のサイタマではなく、他の漫画の登場人物を参考にした方が好ましいと語っている。

例えて挙げるげるなら、『ワンピース』のゾロや、『ナルト』のロック・リー、『ドラゴンボール』の孫悟空やベジータなどは、常に継続してトレーニングを重ねていっているため、長期的にもやる気を維持させてくれる。また、スポーツ系の漫画では『はじめの一歩』なども参考になると言っている。

3. 怪我をしてしまう場合も

他にも、「ワンパンマン・チャレンジ」のやりすぎで怪我をしてしまう人も出ているので、注意喚起が必要である。

例えば、通常ではあまりスポーツをする経験がない人がいきなり多くの負担を体に強いることによって、筋肉や間接を炒めてしまったり、休憩をはさむことなく毎日同じ筋トレを繰り返すことによって、や筋の炎症を引き起こしてしまったりする可能性も侮れない

フランスのユーチューバーSaitamaV2氏も、6カ月「ワンパンマン・チャレンジ」を続けた後、怪我のため断念せざるを得なくなってしまった。

ぺぎぃ
ぺぎぃ
6ヵ月も間を空けずにやり続けるのもどうかと思うが…

理由:フランス人のノリの良さが漫画「ワンパンマン」に合っている

おそらく、ここで気づき始めた人や、初めから既に気づいていた人がいると思うが、『ワンパンマン』所詮漫画である。トレーニングブックではないということを忘れてはいけない。

勿論、フランスでも100%真面目に「ワンパンマン・チャレンジ」を3年間継続すれば世界最強の男になれると考えている馬鹿な人はいない。と信じたい。

ここでは、フランス人のノリの良さが証明されているのだとぺぎぃは考える。

自虐ネタを通じて世間を嘲笑うのが好き

・ 大いなる自虐精神

殆どの人が「ワンパンマン・チャレンジ」に挑むのは、何も世界最強の男になるためではない。

サイタマがフランスで高評を得ているのは、彼が世界最強で、どのような怪人も一撃(ワンパン)で倒すことができるからではなく、むしろその逆で、全く筋肉質に見えず、社会に対して幻滅しているような姿格好のおっさんが、実は周りのどのヒーローよりも強いという世間を馬鹿にしたようなギャップや発想が受けているのである。

編集者のGrégoire Hellot も、以下のように言っている:

« Les mecs qui se moquent le plus des gens qui font de la muscu, ce sont les gens qui font de la muscu ! »(筋トレ馬鹿を一番馬鹿にしたりからかったりするのは、筋トレ馬鹿自身なのさ!)」(参考:https://www.lemonde.fr/pixels/article/2020/03/08/one-punch-man-la-star-des-salles-de-muscu-en-ligne_6032240_4408996.html

このように、自らをネタにする自虐精神がフランスではよく見かけることができる。

おそらく、この「ワンパンマン・チャレンジ」を行っている人も同様に、「こんなくだらない、馬鹿げたトレーニングで世界最強になれるわけがないだろう!」と漫画にツッコミを入れつつも、それを実際に自分で行って見せることで、自分の発言が漫画に対する批判ではなく、「そういう俺も実はこの馬鹿げたトレーニングを行っている連中の仲間なんだぜ」とギャップを楽しんでいるのではないか?

・ 極度な強さをネタにする男らしさ

Grégoire Hellot氏はこうも続けている:

« Il y a un côté “ce but à atteindre mais qu’on n’atteindra jamais. […] Il y a une dizaine d’années, je fréquentais beaucoup les salles de muscu et de fitness, et à l’époque ce qui nous faisait marrer, c’était les “Chuck Norris facts”, tout aussi débiles que One-Punch Man. Il y a un aspect hyperviril à se moquer de la surpuissance ! »(「到底辿り着けないような目標を設定する」というのがあります。十数年前にジムに通っていた当時も、我々がよく笑いのネタにしていたものに「チャック・ノリスの事実」というものがあって、それらも『ワンパンマン』みたいに馬鹿げたものでした。極度な強さをネタにするという矛盾しているようなことが、男らしいとされているのです。)(参考:https://www.lemonde.fr/pixels/article/2020/03/08/one-punch-man-la-star-des-salles-de-muscu-en-ligne_6032240_4408996.html

つまりフランスでは、あり得ないほどの極度な強さをネタにするのが男らしいとして扱われている風習があるのである。

ぺぎぃ
ぺぎぃ
確かに、ぺぎぃも大学生の時、チャック・ノリスのネタが男子の間で一時期大流行していたな!

ギャップだらけの漫画『ワンパンマン』がフランスでウケる理由

このような矛盾しているギャップ要素『ワンパンマン』にも多様に含まれている。

・ 主人公のギャップ

まずは、主人公のサイタマ。通称「ハゲマント」と呼ばれるように、ただの禿げたおっさんであり、卵のような形の頭をしている、魅力のかけらもない人物である。日本の子供向けアニメのアンパンマンのパロディであるともされている。

しかし、この正直凡人以下にしか見えない主人公が実はどんな怪人でも一発(ワンパン)で倒すことができるというギャップを持っている

・ 他の登場人物のギャップ(ネタばれ注意)

また、その真逆の登場人物として、主人公サイタマの友達のキングという人物も登場している。彼は外見は強面の青年で、かなり筋肉質でもある。常に只ならぬオーラを発していることもあり、サイタマのまさに正反対で世間からは「地上最強の男」と呼ばれている。

しかし、この最強の男は、実はただのゲームオタクであり、常に自宅に引きこもってアクションゲームや恋愛ゲームをやっている一般人。喧嘩も一切したことがなく、自分が世間から勝手に最強扱いされている現状に実は戸惑っているという大きなギャップを持っている。

このように、世間一般の漫画の認識を覆すようなパロディからくるユーモアがフランスでは非常に受けるのだと思われる。

それゆえに、「わはははは!なんだこのくだらない漫画は!(←実は大好き)よし!じゃあ、これから俺も毎日ワンパンマン・チャレンジを実行して最強の男になってやるから見てろよ!」というブームを生み出すことになったのである。


まとめ:漫画『ワンパンマン』のトレーニングがフランスでも人気な理由

以下に今回の記事の内容をまとめよう:

・ 最近ではフランスのネット民やユーチューバーを中心に、「ワンパンマン・チャレンジ」のブームが起きている。

・ 専門家の意見を聞くと、このトレーニング方法は「負荷がかからず、単調すぎてあまり意味がなく」、更に続けて休みを入れずに行いすぎると怪我をしてしまうおそれがあるため、トレーニングの効果自体が人気の理由ではない

・ おそらく、フランス人の自虐精神や、極度な強さをネタにする性格『ワンパンマン』のトレーニング方法が人気な理由なのである。

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